全身麻酔を受ける患者の看護

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    By看護研究科 小日向 さくら

    みなさん、こんにちわ。 看護研究科の大日方さくらです(@lemonkango)です。

    手術を受ける患者さんを受け持つ学生さんが実習で一番困る事は・・・

    全身麻酔を受ける患者の看護計画をどのようにレポートとしてまとめて事前学習を活用できるように準備しておけばいいのか?

    という点だと思います。

    そのために、周手術期の患者さんの術後に関連する看護計画についての組み立て方を解説したいと思います。
    吹き出し イラスト6

    全身麻酔を受ける患者の看護について解説したいと思います!

    ■目次

     ●1.全身麻酔を受ける患者の看護
     ●2.全身麻酔を受ける患者を受け持つ際におさえて置きたいポイント
     ●3.全身麻酔を受ける患者の看護のポイント
     ●4.全身麻酔を受ける患者のオリエンテーション
     ●5.看護援助の実際






    周手術期の実習では他の領域別実習よりさらに「早い看護展開」という事が特徴となります。

    一つ一つ参考書を開き、調べていくといくら時間があっても足りません。 また、急性期の病棟になります。 

    その分、指導者さんや、受け持ち看護師さんがとてつもなく怖い場合が多々あります。

    行動計画や看護計画、看護目標で指導者さんなどのツッコミで泣かないように、質問されたらすぐに応えられるようにしておくことがベストですが・・・・ そういうわけにはいかず・・・ ツッコミで泣かされないように、すぐに周手術期の要点が開き調べられる参考書の購入が一番の実習を乗り越える近道となります。


    一番オススメする周手術期の参考書になります。 よくツッコミがある知識が載っているので、一読してから実習に行くべきだと思います。手術1

    1.全身麻酔を受ける患者の看護

    📌ポイント

    <術前の看護>

    ①インフォームド・コンセントにおける支援
     周手術過程において、診断が確定し治療法が提案されるとき、検査時、手術計画決定時、入院時、手術終了時、また退院が近づいたとき、術後病理診断確定時など、機会があるごとにICが行われる。

    特に、術前の手術に関するICにおいて、患者は病気という人生の一大事に勅命した衝撃の中で、リスクを伴う手術への同意の契約を迫られるといっても過言ではない。 ⇒事前学習(術前検査の目的、術前オリエンテーションの目的、術前訓練の種類と目的)にてまとめる。

    ②思いを表現しやすい場の調整


    ③医師との対話の支持

    普段の看護、診療場面さらに医師からの説明・情報提供前・中・後の患者・家族の言動から患者・家族の不安や緊張感、医療者とのコミュニケーションスタイルを知る。患者・家族に最良の医療を受けるために医療者に働きかけることの重要性を伝え、医師や看護師にいつでも質問してよいことを保証する。

    疑問・質問の明確化や医師とのコミュニケーションの工夫を助け主体的に医師と話し合いをするように励ます。医師との対話場面において、必要時には看護師が患者・家族に代わって医師に質問したり、患者・家族の質問を引き出すための問いかけをする。患者・家族が対話しやすいよう医師に働きかけることもできる。


    ④理解の確認とわかりやすい情報提供

    患者・家族への情報提供内容を記録し、医療チーム内で共有しておく。患者・家族が必要十分な情報を得ているか、情報をどのように理解したのかを確認する。  手術を伴う機能的・形態的変化、生活への影響とそれらの対処法についてわかりやすく情報を提供することは、より良質な生活を支えることを守備範囲とする看護師の役割である。


    ⑤迷い、気持ちの揺れに添う

    患者・家族が気持ちを表現するように促し、気持ちのありように理解して、病気や手術に関する情報を得て湧き上がった不安や迷い、気持ちの揺れは自然なことであることを認め、ねぎらう。


    ⑥患者の意向の尊重


     ⑦手術オリエンテーション

    患者・家族が、術前から術後にわたる一連の経過を理解し、手術に向けて身体的・心理的・社会的な準備状態(これらを整えるため具体的に何を準備するのか?術前検査はしなくていい?するとしたらどのような検査?)を整えるための支持的・教育的ケアである。患者が手術を受ける意思を表明すると、外来看護師、病棟看護師、手術室看護師、ICU看護師、手術医、また麻酔医などが協働して手術オリエンテーションを行う。看護師にとって手術オリエンテーション(具体的に何を行うかもおさえましょう)は、患者・家族への情報提供のみならず、情報収集や信頼関係構築のための重要な機会でもある。
    📌ポイント

    手術に向けて身体的・心理的・社会的な準備状態(これらを整えるため具体的に何を準備するのか?術前検査はしなくていい?するとしたらどのような検査?)/p>

    下記にて解説したいと思います!

    2.全身麻酔を受ける患者を受け持つ際におさえて置きたいポイント

    手術を受ける患者さんは,疾患やその治療のために,身体の生理機能が何らかの影響を受けている状態にある。


    たとえば,病変部位から出血を伴い貧血を合併していたり,経口摂取障害や吸収障害を伴う場合では,低栄養状態だったり,免疫機能も低下していることがある。

    また,嘔吐や下痢,ドレナージなどによって消化液が喪失している場合などは,電解質・酸塩基バランスが崩れていることもある。さらに,心・肺・肝・腎などの臓器の機能が低下している患者さんや,生命の危機にある患者さんなど,さまざまな状態で手術に臨んでいる。 術前の検査は,呼吸や循環をはじめとする全身機能の状態を把握し,手術や麻酔侵襲による生体へのリスクがどの程度であるかを評価するために行われる。


    そして,周手術期看護では,術前に行われる検査を理解して結果を読み取り,ケアに活かす力が求められる。術中や術後に起こりうる合併症のリスクを予測し,患者さんが手術や麻酔に耐えられるように,身体的・精神的状態を整えて,よりよい状態で臨めるように備えることが大切である。

    代表的な検査の種類と,みていくポイント 主な検査として,血算・凝固系検査,生化学検査,血糖などの検査を行う。これらは血液による検体検査で,貧血や出血傾向の有無,栄養状態だけでなく,電解質バランス,肝臓や腎機能,耐糖能などの重要な情報が多く得られる。また,心機能や肺機能については,心電図などの生理機能検査や,胸部X線撮影などの画像検査を行う。疾患や患者さんの状態によっては,さらに詳しく調べるために必要な特殊検査を実施していく。  

    術前は,患者さんの全身把握のために検査を確認し,リスクファクターをチェックする。

    検体検査
    血算系の検査 血液一般検査(末梢血検査) 基本的な検査として・・・

    赤血球数(red blood cell count;RBC)

    ヘモグロビン量(hemoglobin;Hb)

    ヘマトクリット(hematocrit;Ht)

    白血球数(white blood cell count;WBC)

    血小板数(platelet count;PLT)

    などを調べる 赤血球 赤血球は,数値が増加した場合を「多血症」といい,血液の粘稠度が亢進して,血栓ができやすく血管が閉塞しやすい状態となる。

    そして減少した場合を「貧血」という。赤血球に含まれる血色素量のヘモグロビンは,全身の臓器への酸素供給量を測る重要なデータとなる。

    ヘマトクリット ヘマトクリットは,血液全体に対する赤血球の割合をいう。貧血の有無を診断するのに用いる。循環血漿量が減少していると高くなり,上昇すると低くなる。

    白血球 白血球は,免疫や感染などの炎症反応を示す。手術患者は,術前に化学療法や放射線療法を行っている場合もあり,副作用で白血球が減少する影響があるため,注意する必要がある。 血小板 血小板は止血機能の指標であり,化学療法や出血性疾患,肝障害などでも血小板数は減少するため,注意する。

    また,後述する血液凝固検査と併せてみていく重要なデータである。  

    術前は疾患のために貧血や出血傾向になっていることもあるため,場合によっては術前に輸血を行い補正する必要もある。 高齢者では,加齢に伴う生理的変動として,赤血球数やヘモグロビン,ヘマトクリットは減少傾向になる。また,妊娠中はヘモグロビンやヘマトクリットの減少から,生理的貧血になる。  このように,対象となる患者さんの病態や生理,薬剤投与や輸血,放射線などの治療背景も合わせてデータをみていくことが大切である。

    凝固系に関する検査
     血液凝固検査 手術では出血が伴うため,事前に出血傾向や止血機能を把握しておくために・・・

    プロトロンビン時間(prothrombin time;PT)

    国際標準化比(international normalized ratio prothrombin time;PT-INR)

    活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time;APTT)

    などを調べる  

    これらの時間は,抗血小板薬や非ステロイド系抗炎症薬の使用,加齢に伴う生理的変化などで延長し,妊娠では短縮傾向となるなどの影響を受ける。 凝固機能の低下は,出血量の増加や手術・止血操作の妨げとなり,術後出血のリスクも高まる。

    また,手術だけでなく麻酔方法にも影響する。出血傾向にある患者さんにおいて硬膜外麻酔や脊椎くも膜下麻酔を行うと,硬膜外血腫の合併症のリスクがあるため,禁忌となっている。

    硬膜外血腫を生じると,脊髄や神経根が圧迫されて神経障害を引き起こすためである。その他,抗凝固薬投与のモニタリング,肝機能障害や播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation syndrome;DIC)の診断として,Dダイマーなどが用いられる。  

    術前に出血傾向や凝固機能が低下している場合は,補正するために輸血の準備が必要である。
    また,大量出血が予測される場合では,あらかじめタイプ&スクリーンなど輸血の準備を考慮する。 抗血栓療法の患者さんには  脳や心臓の梗塞,不整脈の治療のために,ビタミンK拮抗薬であるワルファリンなどの経口抗凝固療法をしている患者さんも多くみられる。抗凝固薬の使用は手術に支障をきたすため,薬の半減期を考慮して術前に中止する必要がある。そのため,休薬によるリスクを回避するために,術前には作用時間の短いヘパリンの使用へ切り替えてコントロールする場合もある。

    しかし,緊急手術などでワルファリンが休薬できなかった場合などは,ビタミンKの静注や,新鮮凍結血漿(FFP)を投与して凝固能を回復させる。これらのような場合には,PTやAPTT,ACTを測定し,凝固機能のモニタリングをしていくことが大切である。

    血液生化学検査

    肝機能や腎機能,代謝・内分泌機能などを評価するために行う。 生化学検査 肝機能に関する検査 肝臓は,代謝機能(蛋白質・糖質・脂質)や解毒・排泄機能,合成機能など,さまざまな機能を持っている。しかし,麻酔薬や手術侵襲に伴い肝血流量が低下し,肝機能が影響を受けるため,術前の肝予備能の評価は重要である。 肝合成能の主な指標として,血清アルブミン(Alb)やコリンエステラーゼ(ChE)がある。いずれも,肝の合成能が低下すると低下する。また,凝固検査の1つであるプロトロンビン時間(PT)も肝機能が低下した場合,凝固因子の合成ができなくなるために低下する。排泄機能の指標は血清ビリルビン(T-Bil)です。薬剤の代謝は肝臓で行われるものが多く,肝機能が低下した場合は薬剤の排泄が遅くなり,通常より作用が遷延する可能性がある。その他,肝障害の指標として,ASTとALTを評価する。

    これらは,それぞれGOT,GPTとも呼ばれているトランスアミナーゼと総称される酵素で,細胞の障害が生じた際に血液中に流出して高値を示す。ただし,ASTは肝細胞のみならず,心筋,骨格筋,赤血球などにも広く存在するため,肝炎や肝硬変などの肝障害のときだけでなく,心筋障害や骨格筋の障害でも上昇するため注意が必要である。ALTは主に肝細胞に局在するために,肝障害で上昇がみられる。

    腎機能に関する検査
     腎臓は,薬物代謝や酸塩基平衡,電解質の維持,水分の排泄などの機能を持っている。 腎機能が低下すると,薬物の代謝が遅れたり,低ナトリウム血症や高カリウム血症などの電解質異常をきたしたり,代謝性アシドーシスをきたしたりするリスクが高くなる。また,蓄積した有毒物質を排泄できなくなることで,尿毒症から意識障害をきたしたり,水分を排出できなくなることで体内に余分な水が過剰に貯留し,肺水腫から呼吸不全をきたしたりするリスクも高まる。 術中は,麻酔や手術に伴う神経・内分泌反応や出血,また循環血液量の減少や腎血管収縮による腎血流量の低下などから,虚血性の腎障害を引き起こす可能性がある。とくに慢性的に腎機能が低下している患者さんや,血管障害(動脈硬化・糖尿病・高血圧など)のある患者さん,大量出血や侵襲の大きな手術を受ける場合では,周術期に腎機能障害をきたすリスクが高くなる。また,腎機能を悪化させる薬剤にも注意が必要である。たとえば,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やX線造影剤,抗がん薬や免疫抑制剤などは腎機能を悪化させる。


    また,腎機能が悪化した場合,腎臓で排泄される薬物,たとえばモルヒネなどのオピオイドや筋弛緩薬などは薬物代謝が遅延し,効果が遷延する可能性があるために,投与量には注意が必要である。  術前の腎機能の指標として,血中尿素酵素(blood urea nitrogen;BUN)や血清クレアチニン(serum creatinine;Cr)などがある。これらは血中の代謝産物で腎機能が低下して排泄が障害されると上昇する。

    また,腎予備能の評価として重要なクレアチニンクリアランス(Ccr)がある。基準値は110〜150(ml/分)で糸球体濾過率(GFR)を反映し,腎血流低下や腎障害によって腎機能が低下していると低値となる。


    電解質系
     ナトリウム(Na)は,主に細胞外液に存在し,血清ナトリウム値は体内の水分バランスの影響を受けて変化する。

    高ナトリウム血症や低ナトリウム血症では,背景に体内の水分バランス異常がある可能性があります。

    原因として,脱水の存在や利尿薬の使用などがないかチェックが必要である。それに対してカリウム(K)は,主に細胞内液に存在する。 細胞が崩壊したり,腎機能が悪化してカリウムを排泄できなくなることにより血中の濃度が上昇し,高カリウム血症となる。高カリウム血症では,心停止や不整脈の危険があるため,ただちに治療が必要である。

    これに対し,カリウム摂取不足,インスリンの使用によるカリウムの細胞内移動,利尿薬の使用による体外排泄などにより,血清カリウム値は低下する。低カリウム血症も,心室細動や心室性頻拍などの致死的な不整脈を引き起こすため,注意が必要である。 カルシウム(Ca)の異常は,神経や筋,心筋収縮力に影響を及ぼしやすくなる。高カルシウム血症では,意識レベルの低下や脱力などが認められる。また低カルシウム血症では,テタニーや筋力低下,けいれん発作が起こりやすくなる。とくに大量輸血を行った場合,カルシウム値は低下する。また,マグネシウム(Mg)にも注目する。高マグネシウム血症をきたした場合,筋弛緩作用が遷延する可能性がある。低マグネシウム血症は筋力低下やテタニー,心室頻拍(torsades de pointes:TDP)に代表されるような致死的不整脈をきたす可能性があるため,注意が必要である。 周手術期は,病態や疾患,治療の影響などから患者さんの電解質バランスは変動しやすいために,必要な補正を行って整えていくことが大切である。

    酵素系

    乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase;LDH)は,すべての細胞に存在する酵素で,細胞の障害や悪性腫瘍などによって数値が上昇する。クレアチンキナーゼ(creatine kinase;CK)は,骨格筋や心筋,平滑筋などに存在し,心筋梗塞や横紋筋融解症,コンパートメント症候群などで筋肉が障害を受けた場合,クレアチンキナーゼ値は上昇する。


    免疫系
    C反応性蛋白(C-reactive protein;CRP)は炎症の指標で,組織壊死や悪性腫瘍などによる組織の障害や,関節リウマチなどの膠原病でも高値を示す。


    耐糖能に関する検査
    手術や麻酔侵襲に対する神経・内分泌系の生体反応として,ストレスホルモン(カテコールアミン,コルチゾール,グルカゴン)の分泌が増加する。

    これらのホルモンは,インスリン拮抗ホルモンで,肝臓でのグリコーゲン分解,糖新生促進,末梢でのインスリン抵抗性が起こり,手術中はインスリンの作用不足から「外科的糖尿病」と呼ばれる高血糖状態になる。

    高度のインスリン作用不足は,急性合併症であるケトアシドーシスや浸透圧利尿が亢進して循環血漿量の低下が生じ,脱水をきたしやすくなる。 検査として,血糖値(glucose;GLU/blood suger;BS)は,血中に含まれるブドウ糖(血糖)の量を表し,代謝状態を示す指標となる。 空腹時血糖値は,80〜110 mg/dl未満,2時間後血糖値は80〜140 mg/dlを基準としている。

    また,糖化ヘモグロビン(HbA1c)は,赤血球のヘモグロビンにブドウ糖(グルコース)が結合したもので,過去1〜2か月前の平均的な血糖状態を反映する。 糖尿病で治療を受けているような場合や,糖尿病が疑わしい場合には,血糖値だけでなく必ずHbA1c(基準値はNGSP:4.6〜6.2 %,JDS:4.3〜5.8 %)も測定する。

    高値の場合は,糖尿病や腎不全を示し,低値では膵臓腫瘍のインスリノーマ(膵島線腫)や溶血性貧血が考えられる。とくに糖尿病の患者さんについては,術前の血糖コントロールの状態と治療法を知り,合併症の有無と症状を確認しておくことが大切である。

    動脈血ガス分析
    動脈血ガス分析により,酸素が血中に十分に取り込まれているか(酸素化能),二酸化炭素が排出できているか(換気能),酸塩基平衡はどうであるかを知ることができる。 動脈血酸素分圧(PaO2)は肺の酸素化能を示す。  

    酸素吸入などで上昇し,肺炎,COPD,間質性肺炎などの肺疾患を持った患者では低下する。それに対して動脈血炭酸ガス分圧(PaCO2)は,肺胞での換気能を判断する指標となる。低換気ではPaCO2は上昇し,過換気では低下する。

    酸塩基平衡に注目するうえで最も重要なのが水素イオン指数(pH)。  pHは血液の酸性度を示しており,pH 7.35以下は「酸血症(アシデミア)」,pH 7.45以上は「アルカリ血症(アルカレミア)」として定義されている。そして,アシドーシス,アルカローシスはその異常を起こす病態をいう。どちらに傾いている状態かを鑑別し,いずれも電解質異常やエネルギー産生に異常をきたすため,必要な治療を行う。  

    たとえば,二酸化炭素が貯留するとPaCO2は上昇し,アシデミアとなる。また,過換気の場合には二酸化炭素が排出されPaCO2は低下し,アルカレミアとなる。呼吸が原因でアシデミアをきたすことを「呼吸性アシドーシス」と呼び,その逆を「呼吸性アルカローシス」と呼ぶ。  

    一方,体内に有毒な有機酸が蓄積すると重炭酸イオン濃度(HCO3−)が相対的に低下し,アシデミアに傾く。これに対し,嘔吐,低カリウム血症,脱水などではHCO3値は上昇し,アルカレミアとなる。代謝性物質が原因でアシデミアをきたすことを「代謝性アシドーシス」と呼ぶ。 動脈血液ガス分析では,塩基過剰(base exses;BE)も,HCO3-とともに代謝性因子による酸塩基平衡異常の程度を表すため,アシドーシス,アルカローシスの原因の鑑別に有用である。

    生理機能検査
     
    📌ポイント

    呼吸機能の検査

    全身麻酔では人工呼吸器を使用するために,肺へ大きな影響を及ぼす。そして,手術操作を容易にするために行われる片肺での換気や,体位変換,手術台を回転させることは,換気の制限や呼吸の抑制などが起こりやすい状態になる。それに伴い,換気血流不均衡や肺の膨張が妨げられ,術後肺合併症のリスクがより高くなる。

    また呼吸機能は,全身への酸素供給をするために重要である。そのために,換気と肺のガス交換の予備能を事前に把握し,呼吸機能を正確に評価することが術中の安全のために必要である。 術前には,スパイロメトリーなどの測定を行う。また,心機能,ヘモグロビン,末梢循環不全なども影響するため,胸部X線写真や,必要に応じて動脈血ガス分析なども併せて総合的に判断する。


    スパイロメトリー
    肺を通過する空気の量と速度を測定し,肺換気障害を評価します。%肺活量と1秒率から,拘束性,閉塞性,混合性換気障害に分類される %肺活量(%vital capacity;%VC)は,年齢や身長から予測される肺活量(VC)に対する実測肺活量の割合で,換気予備力の指標となる。 80%以下を「拘束性障害」といい,胸郭や胸腔内,肺自体の何らかの異常で肺の膨張が障害されている状態である。原因となる主な疾患として,無気肺や間質性肺炎,気胸などがある。また,肥満の患者さんの肺も分厚い胸壁によって拡張しにくい状態である。肺の膨張が最大限に行われるように術前からの呼吸訓練を行うことや,深呼吸を促すことが大切である。

    一方,1秒率(FEV1.0%)は,実測された努力性肺活量(forced vital capacity;FVC)と,1秒間に呼出した量(1秒量:FEV1.0)の割合で,術後肺合併症の発生にも関連する喀痰の喀出力の指標となる。 70%以下を「閉塞性障害」といい,気管支や肺胞道といった気道自体に狭窄や分泌物による抵抗が生じて,息を出しにくい状態となってる。原因となる主な疾患として,喘息や気管支炎,肺気腫などがある。また,1秒量から術後合併症の発生リスクをみると,700〜1000 mlでは術後呼吸器不全は起こりやすくなっており,700 ml以下では生命への危険も大きいとされているため,注意が必要である。

    循環機能の検査
     
    📌ポイント

    標準12誘導心電図

    術前の心電図の測定は,不整脈や心筋虚血などの評価になり,術中や術後に異常が起こった場合に比較するための指標となる。 周手術期は麻酔や手術侵襲に伴い,ストレスホルモンの分泌増加,血圧や酸素分圧,電解質バランスの変動などが容易に起こる。

    それらは,さらに心筋自動能や刺激伝導系に作用し,不整脈や心筋への酸素供給不足などさまざまな影響を引き起こすリスクを高める。また,動脈硬化や高血圧,糖尿病などの危険因子を有している場合も多く,注意が必要である。 不整脈は,虚血性心疾患や弁膜症などの心疾患とともにみられることが多いといわれている。 心房細動では弁膜症を合併していることが多く,血栓が認められた場合は抗凝固療法などが行われる。

    また,心室性不整脈は心室細動に移行する頻度が高いといわれており,抗不整脈薬の投与や除細動の準備を考慮し,房室ブロックでは事前に対処するためにペースメーカーの植え込みや経皮ペーシングが必要になる場合もある。循環動態への影響は生命に直結するために,術前に評価を行ったうえで,治療と準備をすることが重要である。

    画像検査
    術前の画像による診断検査では,胸部の異常や気道確保に必要な情報を得るために,胸部単純X線撮影を広く行っている。また,特殊検査として,CT撮影(コンピューター断層撮影:computed tomography)や,MRI検査(核磁気共鳴画像:magnetic resonance imaging),血管造影,エコーなどが必要に応じて行われる。

    部単純X線撮影 胸部X線写真では,異常な陰影の有無や増強から,無気肺や肺炎,気胸などの疾患の判定や胸水貯留などの異常を知ることができる。また,心陰影の大きさや胸郭に対する心臓の占める割合の心胸郭比(cardiothoracic ratio;CTR)によって心不全を把握したりする。その他,気管の太さや長さ,変形の有無などの気道確保に必要な情報を得ることができる。

    3.全身麻酔を受ける患者の看護のポイント

    手術や麻酔はさまざまな侵襲を生体に及ぼすために,患者さんの状態を術前に評価することはとても重要である。 術前評価では,それらから得られる既往歴や身体所見などの情報も,検査データと併せてみていくことが大切である。そして検査結果から,今,患者さんに何が起こっているのか,それは手術や麻酔を受けることでどのような影響を受けるのか,そのために何が必要なのか,術中ケアの実際に繋げて考える。

    看護師が検査データをアセスメントすることは,検査結果をもとに行われる治療や処置に迅速に対応することができ,患者さんに対する術中や術後の看護の質を左右するといえる。

    4.全身麻酔を受ける患者のオリエンテーション

    術前のオリエンテーションの実施目的
    全身麻酔での手術を予定している患者さんを対象におもに療養経過や手術に関する情報を提供するオリエンテーションですが、その目的の一つは術後の合併症予防にある。  術後は疼痛によって腹式呼吸が抑制されるため、深呼吸が困難になり、末梢気道が閉塞、肺胞が虚脱して無気肺や肺炎を引き起こす可能性がある。

    その予防のために、術前に呼吸訓練や痰の出し方などを説明し、理解してもらうようにする。 特に肺など呼吸器の手術、食道手術の患者さんはそのリスクが高いので、入院する前から予防的リハビリを行うことは重要である。また、手術を受ける患者さんは、多かれ少なかれ誰もが不安をもっている。きちんとした情報提供を行うことで、その不安を軽減することも、オリエンテーションの大切な目的である。  

    一般的に、入院後に行われる術前オリエンテーションは手術室の看護師が行うことが多い。

    5.看護援助の実際

    1 禁煙
    喫煙による肺・気管支機能の低下により、術後に痰の量が増加することがある。肺機能を維持し、痰の量を少なくするためにも、喫煙習慣のある人には必ず禁煙してもらう。また、体力低下を防ぐために日常生活を制限されていない限り、散歩や体操などの軽い運動を心がける。これは手術にむけて体調を整えるだけでなく、術後の回復を早めることにもつながる。

    2 深呼吸

     全身麻酔によって硬くなっている肺や胸郭を動かすために、深い呼吸を行う。術後にいきなりはできないので、あらかじめ練習しておく必要がある。

    3 痰の出し方
     術後は痰が多くなるが疼痛があったり、身体に力が入らなかったりするため、排痰が困難になる。練習によって痰を出せるようにする。

    4 呼吸訓練器具の使い方
    呼吸筋を鍛えるために、呼吸訓練器具を使うので、患者さんにその購入方法や使い方をマスターしてもらいます。

    5 うがいの方法
    術後の安静期間は、床上で過ごすことになる。口腔ケアや排痰のためのうがいも床上で行うことになるので、その方法を知ってもらう。 うがいの方法は次の通りです。 ベッドが濡れないようにタオルなどを敷き、仰臥位で顔を横に向ける。 吸い飲みで水を少し口に含んで含嗽する。顔を上に向けるとむせてしまうことがあるので、横向きのままですすぐようにする。十分にすすいだら、水を吐き出すための容器を頬にあてる。容器を頬に密着させたまま、静かに水を吐き出す。顔を横向きにしたままで口を開けると、自然に流れ出す。
    📌ポイント

    実施に際しての2つのポイント

    ポイント1
    理解度を確認しながら、わかりやすく説明を 患者さんが理解しやすいように、わかりやすい説明を心がけると同時に、理解度を確認しながら進めることが大切である。

    また、患者さんのなかには、告知されて間もないことから精神状態が不安定になっている人もいる。

    説明を理解できているのか、手術に臨める状態にあるのかを観察しながら説明する。  患者さんが高齢の場合、理解度の確認は特に重要となるが、患者さんが家族と一緒であれば、患者さんとともに家族にも質問の有無を問い、理解状況を確かめる。また、説明の途中でも「大丈夫ですか?」などと声をかけ、表情や動作から不安な様子が感じとれる場合には注意を払う。

    ポイント2
    患者さんの精神状態、生活環境などの情報はスタッフと共有する  妙に落ち着きがなかったり、ほかの患者さんへの配慮を欠き、過剰に質問をしたりする場合、さらに呼吸訓練器具に触ろうともしなかったりする場合、それは不安の徴候とも考えられる。こうした徴候がみられたら、疾患や手術を受け入れられないでいる可能性もあるので、「眠れていますか?」「手術が決まってから不安を感じているのですか?」などと声をかけてみる。  

    独居でサポートの得られない患者さんや不安をキャッチした患者さんについての情報は、医師や病棟スタッフに提供していく。

    ポイント3
    飲食・飲水制限 麻酔中の胃内容物の逆流による誤嚥を防ぎ、重篤な呼吸器合併症(この合併症予防のために他にすべき訓練はありますか?)を予防するために、術前の飲食・飲水制限を行われる。術前の絶飲食時間は、胃内容物、胃からの排泄速度、下部食道括約筋機能制限を考慮して決定される。看護師は患者・家族の理解を確認し、患者が飲食・飲水制限を厳守できるようにする。 重篤な呼吸器合併症(この合併症予防のために他にすべき訓練はありますか?)

    術後呼吸器合併症とは 無気肺
    末梢気管支が気道内分泌物で閉塞し、閉塞部位より肺胞側(ガス交換の場)の空気が吸収されると、やがて肺胞がつぶれて無気肺となる。 無気肺は肺の一部から全体に起こり、放置すると分泌物内で細菌が繁殖して肺炎を引き起こす。

    気道内分泌貯留の要因:低換気、長期間の臥床、喀痰排出困難、喫煙など

    術後肺炎
    無気肺→肺炎となることが多く、熱発、呼吸困難、化膿性痰の喀出などの肺炎所見がみられるようになる。 免疫力が低下した患者や侵襲の大きい手術などではリスクが高くなり、術後は、5~10%の患者に無気肺・肺炎などの呼吸器合併症が起こる。

    術後に呼吸器合併症が起こりやすい理由 術中の麻酔薬使用 麻酔薬は呼吸機能抑制・心機能低下などの副作用が生じる。その副作用が術後24時間以内は残存し、呼吸抑制が起こる可能性がある。

    また、不十分な覚醒状態では肺活量も低下する。 気管内挿管による刺激 全身麻酔では、気管内にチューブを挿入し人工換気によって呼吸管理を行う。術後は抜管するが、挿入時の気道・喉頭への刺激によって気道内分泌物が増加しやすい。 疼痛の影響 術後は痛みにより肺活量の低下や 呼吸が浅くなることが多い。とくに、下部の肺が十分に広がらないため、無気肺が起こりやすい。

    また、痛みにより咳嗽もしにくく、喀痰排出が困難になることが多い。

    臥床状態
    横隔膜の動きを抑制し、気道内の分泌物貯留、末梢気道の閉塞などにより無気肺を引き起こす。

    また、座位や立位に比べて咳嗽もしにくく、背部に気道分泌物が貯留しやすい。 リスク因子と発生頻度 慢性肺疾患の既往(気管支喘息、肺気腫、慢性気管支炎など)⇒健康者と比べ3倍 喫煙歴⇒非喫煙者と比べ倍 年齢⇒65歳以上で高い 肥満⇒術後、残気量が減少し、横隔膜拳上により無気肺になりやすい 上気道感染の存在 低栄養状態(低アルブミン血症) 糖尿病の合併⇒感染防御機能が低下しているため、頻度が高いステロイド使用者 手術部位 

    ・開腹⇒非開腹手術と比べ4倍 

    ・上腹部⇒下腹部と比べ2倍 手術時間⇒3時間以上で頻度が高い

    呼吸訓練の目的
    術前・術後に行う呼吸訓練は、合併症を予防し、後遺症を最小限に抑えて、スムーズな術後の回復を図ることを目的に行われる。 無気肺・肺炎を予防するためには、気道分泌物の減少、喀痰の排出を容易にする、肺活量を増加させることが大きなポイントとなる。そのため、呼吸機能の術前評価やリスク要因の有無などのアセスメントを行い、呼吸訓練を事前に行うことで合併症を予防する。

    術前評価
    ①ヒュー・ジョーンズ分類 患者の息切れ度を健康者と比べて分類したもの。大まかな呼吸機能を評価するのに便利。

    Ⅰ度 正常 <階段も問題なく昇れる> 同年齢の健康人と同様に仕事ができる。歩行、坂、階段の昇降も同様にできる。また、安全に手術ができる Ⅱ度 軽度 <階段は健康人並みには登れない> 平地では同年齢の健康人と同様に歩ける。

    しかし、坂や階段は健康人並みには昇れない。ほぼ安全に手術ができる。しかし、肺切除術では術後合併症のリスクが高い。

    Ⅲ度 中等度 <マイペースなら1km以上歩ける> 平地でさえ健康人並みには歩けない。しかし、自分のペースでなら1km以上歩ける。重篤な呼吸機能障害がある。Ⅲ度以上では、開胸術の適応にはならない。

    Ⅳ度 高度 <休まないと50km以上歩けない> 同上 Ⅴ度 きわめて高度 <息切れのため外出できない> 会話や着脱の際にも息切れがする。 

    ②呼吸機能検査 スパイロメーター:

    換気能力の評価 人間は、安静時には1回500ml、1分間に15回換気をしている 機能的残気量:安静時の呼吸で、息を吐き終わった時に肺内に残っている空気の量 肺活量:空気を吸えるだけ吸い込んだ状態(全肺気量)から、できるだけ吐き出した状態(残気量)までの空気の量 ⇒肺活量と1秒率を測定し、拘束性障害・閉塞性障害・混合性障害を判断する。 ※肺活量→80%以下で拘束性障害(肺が縮んでいる) 肺活量は性別、年齢、身長などにより予測できる。その予測値に対する比率のこと。 ※1秒率→70%以下で閉塞性障害(気道が狭くなっている)最大吸気状態から努力呼出した時の肺活量を「努力性肺活量」という。その最初の1秒間の量のこと。 ★術後呼吸器合併症の発生は、1秒率と相関する。

    1秒率50%~70%で要注意、50%以下で高率、30%以下で必発

    動脈血ガス分析
    人間は、大気中から肺を介して1分間に250mlの酸素を血液中に取り入れ、組織で消費される 組織で産生された200mlの二酸化炭素は血液によって肺に運ばれ、大気中に排出される。 ⇒ガス交換は3億個の肺胞で行われ、その結果は動脈血中のO2、CO2量に反映

    ※Pao2  
    正常値80~100mmHg、年齢と共に低下 ※Paco2 正常値40±5mmHg、肺胞換気量に規定される。

    年齢による低下はない。

    呼吸訓練
    術後に深呼吸を行うことで,肺の再膨張を促進し肺胞の虚脱を防止することや,呼吸機能を最大限に保つことができ,肺合併症の予防や酸素化の促進ができ。 術前に深呼吸の方法を理解し訓練することで,術後患者さん自身が効果的な深呼吸を実践することの助けになる。

    腹式呼吸
    A:鼻から息を吸い,腹部が膨らみます。

    B:口から息を吐き,腹部がへこみます。このとき上腹部を少し押さえて,しっかり吐き切ります。

    呼吸は胸式呼吸よりも腹式呼吸のほうが,より多く肺への酸素の取り込みが行えますが,ベッド上での臥床は横隔膜の動きを抑制します。術前から横隔膜を積極的に動かす腹式呼吸の訓練を行うことが大切です。

    ①膝下に枕を置いて膝を曲げ,セミファウラー位をとります。

    ②患者さんの両手を上腹部に置きます。

    ③ゆっくりと鼻から息を吸い,口から吐きます。このとき,吸気時に腹部が膨らみ,呼気時に腹部がへこむことを確認します。

    ④さらに,呼気時に上腹部に圧迫を加えてしっかり吐き出します。

    ⑤しっかり吐き出すことで,吸気が楽にできることを説明します。 腹部の手術であれば,術後は創部を手で保護し振動を少なくすることで,苦痛を緩和しやすくなることを説明しましょう。

    シルベスター法
     A:鼻から息を吸いながら,腕を上げます。

    B:口から息を吐きながら腕を下げます。 吸気時に上肢を挙上し,呼気時に上肢を下降する胸部の筋肉ストレッチング運動です。

    換気量を増大するとともに,肋間筋を鍛えて呼吸機能を高めます。気管挿管中でも行えるという利点があります。

    器具を用いた呼吸訓練 呼吸機能が低下している患者さん(スパイロメトリーの%肺活量が80%以下あるいは1秒率が70%以下の場合)や高齢者には,器具を用いて呼吸機能をトレーニングすることも有効である

    呼吸訓練器具
     添付の使用手順に沿って適切に使用しましょう。

    呼吸抵抗タイプ ・トリフロー®:ゆっくり,一定の速さで持続的に吸入することで,吸気を最大限まで行い,肺砲内に十分な空気を取り入れて拡張させます。 他にコーチ2®,ボルダイン5000®,クリニフロー®,ピーフレックス®などがあります。 再呼吸タイプ ・スーフル®:呼気時に抵抗を与えることで呼出時間を延長し,残気量を減らします。さらに,自分の呼気の一部を再吸入することによって血中の炭酸ガス濃度を高め,呼吸中枢を刺激して反射的に深呼吸を促します。 気道の浄化 術後はチューブや麻酔薬,疼痛や不安などにより,気道の分泌物の増加,呼吸筋機能の低下,咳嗽反射の低下が起こり,気道の「排出・浄化作用」が障害されます。術後に効果的な排痰を行えるよう,術前から効果的な排痰法を練習しておくことが必要となります。

    排痰訓練
    ①膝を軽く屈曲させ,セミファウラー位または側臥位をとります。

    ②予定されている手術創部位を患者さん自身の両手で保持し,創部への振動をできるだけ少なくします。

    ③大きくゆっくりと息を吸い込んだ後,息を1~2秒止めてから1回あるいは2回続けて咳を行います。

    ④咳が終わったら,一度呼吸を止めてからゆっくり吸気へ移っていきます。

    禁煙
    前述したように,喫煙により気管分泌物の貯留による肺合併症が起こりやすくなります。術前30日間の禁煙が手術部位感染(surgical site infection;SSI)予防の観点からも推奨されています。

    ※術前絶飲食時間のガイドライン(日本麻酔科学会2012)

    麻酔に対する準備(麻酔全投薬)
    目的:患者の不安の緩和、鎮静・鎮痛、口腔内・気道内分泌抑制、誤嚥予防などが挙げられる。

    患者の意識レベル低下による患者取り違え防止、また、必要最小限の薬剤で麻酔を行い患者への麻酔薬による侵襲を最小限にするという意図から、手術室入室前の麻酔前投与は原則として廃止されている。

    しかし、緊張度が高く鎮静が必要な患者には、麻酔医が最小限の前投薬を指示する場合がある。
    前投薬がなされる場合には、特に作用時間の長い鎮痛薬、睡眠薬は使用しないことが推奨された。痛みを伴わないことが望ましく、注射より経口・経皮経路が適切である。

    さらに麻酔医から、鎮静目的の為の手術前夜の与薬がされた場合は、睡眠の確保と同時に患者の転倒防止には十分に留意し、防止する。

    麻酔前投薬の目的と投与薬剤
     摂取物 麻酔導入までの絶飲食時間 清澄水(せいちょうすい) 水、茶、アップルまたはオレンジジュース(果肉を含まない果実ジュース)、コーヒー(ミルクを含まない) 2時間 母乳 4時間 人工乳・牛乳 6時間 固形物 (軽食:トーストと清澄水) (揚げ物、脂質を多く含む食物、肉) 適切な絶飲食時間を考慮 6時間以上 8時間以上

    ①患者の不安の軽減と鎮静:鎮静薬、鎮痛薬

    ②唾液、気道内分泌物の抑制:副交感神経遮断

    ③胃酸分泌の抑制:H2遮断薬 ④疼痛闘値の上昇:鎮痛薬

    麻酔前投薬をする患者の観察とケア
    麻酔前投薬に使用される薬物、特に麻薬・鎮静薬などの中枢神経抑制薬は舌根沈下による上気道閉塞、低換気、低酸素血症などの呼吸抑制や循環抑制などを起こすことがあるので、手術室入室時から麻酔導入までは、患者の意識状態やバイタルサインの変化を十分観察する必要がある。  

    最近は、歩行による手術室入室も多く行われており、患者誤認防止のための患者確認をする目的もあり、鎮静薬などの麻酔前投薬をせずに手術室に入室する患者も増えてきている。


    麻酔の基礎知識と麻酔中の援助
    手術は痛みや恐怖などのストレスを伴う。麻酔は、痛みや恐怖などのストレスを鎮静作用と鎮痛作用により取り除くことで、有害反射を起こさず患者が安全に手術を受けることを目的としている。  

    しかし、麻酔は偶発症や合併症などのリスクを伴うため、看護師は万全の準備をすること、モニタリングにより患者の状態の変化を見逃さないこと、変化に対処するために、モニタリングと医師と協力し、迅速な対応をすることが重要である。

    局所麻酔(全身麻酔ではないが)
    局所麻酔は、末梢神経の局所麻酔薬を作用させて、意識を消失させることなく、末梢神経を麻痺させ、無痛状態を作り出すものである。  
    末梢神経の遮断部位によって、脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔、伝達麻酔、浸潤麻酔、表面麻酔、神経ブロック、神経叢ブロックに分類される。

    (1)脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔  脊髄くも膜下麻酔は、脊椎部のクモ膜下腔に局所麻酔薬を注入し、脊髄神経前根と後根を遮断する。
    また、硬膜外麻酔は、脊柱管内の硬膜外腔に局所麻酔薬を注入し、鎮痛遮断を行う方法である。 <

    脊髄くも膜下麻酔
    麻酔名 脊髄くも膜下麻酔 作用 クモ膜下腔に局所麻酔を注入し、脊髄神経の前根と後根を遮断する。 適応 2時間以内に終わる短時間の下腹部以下の手術 禁忌 同意や協力が得られない患者 出血経口や抗凝固薬、抗血小板薬投与中の患者 頭蓋内圧が亢進している患者 ショックや循環血液量が極度に低下している患者 穿刺部の感染がある患者 使用される薬剤 脳脊髄液(比重:1.003〜1.009)より高比重液、等比重液、低比重液の局所麻酔薬 局所麻酔薬(ブピバカイン、テトラカイン、ジブカインなど) 合併症 血圧低下:交感神経遮断により末梢血管が拡張し血圧が低下する 呼吸抑制:麻酔高が高位になることが起こる。

    全脊髄くも膜下麻酔の場合には、麻酔薬の作用が脊髄高位に及び、血圧低下、呼吸停止、意識消失、徐脈となる。

    人工呼吸を行う。 麻酔後頭痛:クモ膜の穿刺孔から髄液が濾出し、脳脊髄圧が低下することで起こる。 髄膜刺激症状・髄膜炎 麻酔名


    硬膜外麻酔
    作用
    硬膜外腔に局所麻酔薬を注入し、脊髄神経を遮断し鎮痛を得る。 文節麻酔の場合には局所麻酔の量により、遮断する脊髄の範囲を変化させることができる。
    分離麻酔の場合には、局所麻酔薬の濃度により、交感神経、知覚神経、運動神経を分離して麻痺させることができる。 適応 頭部、顔面以外の手術 硬膜外腔にカテーテルを留置し、長時間の鎮痛が行える。

    全身麻酔に併用することで、術中・術後の鎮痛にも用いられる。 禁忌 頭蓋内圧が亢進している患者 穿刺部の感染がある患者 出血傾向や抗凝固薬、抗血小板薬投与中の患者 同意や協力が得られない患者 使用される薬剤 局所麻酔薬(リドカイン、メビバカイン、ロピパカイン、ブピバカインなど) オピオイド(モルヒネ、フェンタニルなど)

    合併症 血圧低下:
    交感神経遮断により末梢血管が拡張し血圧が低下する。
    悪心・嘔吐:交感神経遮断により副交感神経活動が活発化する。
    硬膜外血腫、硬膜外腫瘍 カテーテルの血管内迷入による局所麻酔薬の血管内誤注入では、耳鳴り、痙攣、昏睡、心停止となる。 カテーテルのクモ膜下迷入による局所麻酔薬のクモ膜下誤注入では、下肢の運動不能、高位脊椎麻酔、前脊麻、呼吸停止、徐脈、意識消失となる。

    (2)硬膜外麻酔実施時の看護  

    硬膜外麻酔は、狭い手術台で側臥位となる患者から見えない背部での処置であるため、患者が不安や恐怖を感じやすい。しかし、正しい体位をとることが硬膜外麻酔を短時間で円滑に行うことにつながるので、看護師は正しい体位を熟知し、患者の身体をしっかりと支え転落の防止することにも1つひとつ操作の説明を行いながら介助する。 ※硬膜外麻酔実施の手順と看護 硬膜外麻酔実施の手順 看護師の援助 ①〜⑩は麻酔医が滅菌手袋を装着して行う ・ 麻酔医が必要物品を準備するのを介助する。

    ①穿刺時の体位確保 ・側臥位を取る。左右はどちらでもよい。
    ・ 患者に体位をとる木亭を説明し、協力を得る。

    ・ 患者を側臥位にし、体軸と両肩を通る線が垂直にあり、脊柱が手術台と平行になるように頭に枕を置く。

    ・ 背中を手術台に垂直になるようにする。

    ・ 頸部を曲げ、膝を抱えて強く前屈させる。

    ・ 患者に脊柱を屈曲させ、臍部を見るよう伝える。

    ・ 脊椎を屈曲し、棘突起の間隔をできるだけ広げることで穿刺しやすくなることを患者に伝える。

    ・ 頭部と肩、殿部・下肢を上肢でしっかり支える。 ②皮膚消毒、ドレーピング ・ 穿刺部位を中心に広範囲に消毒する

    ・ 穿刺部位の周りにフィルムドレープ(穴あき)をかぶせる。

    ・ 腰背部を濾出させる。

    ・ 殿部や下肢はバスタオルなどのリネンで覆い、不必要な露出を避ける。

    ③穿刺部位の皮内

    ・皮下の浸潤麻酔

    ・ 浸潤麻酔の針を刺すので、動かないよう説明する。

    ④硬膜外腔麻酔

    ・ 硬膜外針を穿刺する ・ 硬膜外腔(除圧)に達した所を確認する。

    ・ 針を刺し、押されるような感じがするが、動かないよう説明する。

    ・ 痛みの有無を確認し、医師に伝える。 ⑤カテーテル挿入 ・カテーテルを挿入し、放散痛、血液や髄液が吸引されないことを確認する。

    ・ カテーテルの神経根刺激による下肢や腰部の放散痛の有無を患者に確認する

    ⑥テストドーズ

    ・局部麻酔薬2〜3mlを試験量として注入する。カテーテルが血管やクモ膜腔に入っていないことを確認する。

    ・ 局所麻酔薬の血管内誤注入による耳鳴り、クモ膜下誤注入による下肢の運動不能などの症状を患者に確認する。

    ⑦カテーテルの固定

    ・ 患者にカテーテル挿入が終わったことを告げる。

    ・ 背部を清拭しカテーテルが骨部で圧迫されないような位置でカテーテルを透明フィルムと絆創膏で固定する。

    ⑧体位変換

    ・ 患者を仰臥位に戻す。

    ⑨麻酔レベルの確認

    ・ 温冷感の麻痺レベルと交感神経の麻痺レベルが一致する。

    ・ 痛覚の麻痺レベルは温冷感と交感神経の麻痺レベルより、2.3分節尾側である。

    ・ アルコール綿で冷感の消失(コールドテスト)、尖ったもので、痛覚の消失(ピンプリックテスト)を確認する。

    ・ 穿刺部位、カテーテル挿入の長さ、投与した局所麻酔薬の種類と量、脊髄神経の遮断範囲を確認し、記録する。

    ③麻酔導入の援助  

    全身麻酔下で手術を受ける患者は、意識消失・無痛・筋弛緩状態に置かれ、自分の安全・安楽を守ることができない。

    多くの患者にとって手術は道の体験であり、手術や麻酔に対する不安や恐怖心を持っている。麻酔により、身体機能が抑制され、機器的状態に陥りやすいこと、長時間の体位固定による皮膚損傷や神経障害、手術部位感染(SSI)など手術にともなう合併症を起こす危険性がある。手術室看護師は手術侵襲、麻酔の生体への影響を熟知し、患者が身体的安全・安楽が得られ、不安や恐怖心が軽減することにより精神的安楽が得られることを目標に看護を行う。

    ①患者の手術室入室から麻酔導入までの看護  

    手術室への患者搬送から麻酔導入までは、患者が最も緊張し、不安が強い時期である。手術室看護師は、患者の観察により不安感や緊張の程度を察知し、1つひとつの処置を超えをかけながら行い、必ず側にいて笑顔で接することで安心感を与えるように援助する。

    (1)手術室への患者搬入  患者は、歩行、車椅子、ストレッチャーなど様々な方法で、入室する。

    看護師はマスクをはずし患者に笑顔で挨拶と自己紹介をする。患者誤認を防ぐために患者に氏名を名乗ってもらい、識別バンドとカルテで氏名、生年月日、血液型、ID番号を確認する。  

    麻酔前投薬をされた患者の場合は、鎮静薬による意識状態の変化、呼吸抑制の有無や分泌物抑制薬による口渇の有無を観察し、病棟のストレッチャーから手術室のストレッチャーに静かに移す。  

    歩行で入室した場合は、疾患、術式、手術部位、麻酔前投薬・浣腸など術前処置の施行状況とその効果、バイタルサイン、血液型、感染症の有無、持参品などについて、病棟看護師から引き継ぎを受け、患者が安全に全身麻酔と手術を受けられる状態であることを確認する。

    (2)麻酔導入の準備

    ①各種モニターの装着  

    麻酔や手術による呼吸・循環・体温の変動は大きく、患者の状態を持続的に観察し、異常を早期発見し対処することで、患者を安全に管理するため、患者に種々のモニターを装着する。

    ・ 心電計:HR(不整脈・心筋虚血)を観察。

    ・ 血圧計:末梢静脈ラインと反対側の上腕に装着する。上腕動脈を触れる部位を確認し、マンシェットを巻く。

    ・ Sop2:呼吸状態の指標 血圧測定と反対側に装着 ・ カプノメータ―(呼気終末炭酸ガスモニター):肺から排出される二酸化炭素を測定し、換気が正常に行われているか否かの指標となる。

    換気用マス行くや呼吸器回路に組み込まれている。

    ・ 体温計:直腸温・腋窩温・食道温・鼓膜温など深部体温を測定する。骨盤内の手術では、食道温・鼓膜温を選択するなど、手術の妨げや手術による影響を受けにくい部位で測定する。

    ②末梢静脈ルート確保の介助  手術時の末梢静脈ルート確保は、血管内留置針を用いる。体動や体位変換により固定が外れることのないよう確実に接続し、ループをつくり、引っ張ってもすぐに抜けないように絆創膏で固定 ※麻酔導入から気管挿管までの手順と看護 麻酔導入の手順(麻酔医) 看護師の援助

    ①患者入室

    ②モニター装着 ・ 血圧計、心電図、Spo2を装着する。

    ・ V.Sをチェックする。

    ③末梢静脈ルート確保 ・ 末梢静脈ルート確保を介助する。

    ④酸素投与 ・マスクを当て、酸素投与を開始する。 ・ 患者にこれから麻酔が始まり、だんだん眠くなる事を話す。 ⑤静脈麻酔薬投与、吸入麻酔薬投与

    ・ 睫毛反射や呼名反応で眠ったことを確認する。

    ・ 意識消失後、マスクによる補助呼吸を開始する

    ・ 患者の意識状態を観察する。 ・ 麻酔薬による血圧・脈拍の変化を観察する。

    ・ 呼吸状態の観察がしやすいように胸部から腹部の掛け物を外す。

    ・ 胸郭の動き、Spo2値を観察する。 ⑥筋弛緩薬投与 ・筋緊張が消失したら、調節呼吸を行う。

    ・ 胸部の動きや自発呼吸の消失で、筋弛緩薬の効果を観察する。

    ⑦喉頭展開

    ・ 喉頭鏡で喉頭蓋を挙上し、喉頭展開をする。

    ・ 口腔内の分泌物・吐物がある場合は、口腔内を吸引する。

    ・ 喉頭鏡を麻酔医に渡す。

    ・ 口角を軽く引き、視野を広げる。

    ・ 吸引を介助する

    ・ 喉頭鏡による歯牙損傷、口唇損傷の有無を観察する。

    ⑧気管チューブ挿入

    ・気管チューブを挿入する。

    ・ 気管チューブを麻酔医に渡す。

    ・ スタイレットを抜き、チューブと麻酔回路を接続する。

    ・ 気管チューブ挿入による喉頭咽頭刺激で血圧が上昇しやすいので、血圧を頻回に測定する。

    ⑨呼吸音の聴取

    ・両側の肺の呼吸音を聞き、チューブの位置が確実に気管内に挿入されたことを確認する。

    ・ 呼吸音が聴取され、チューブの位置が確実に気管内に挿入されたことを確認する。 ・ 左右の胸郭の動き、皮膚の色調を確認する。 ・ カフを膨らませ、カフ圧を調節する。

    ・ バイタルサイン、動脈血酸素飽和度、カプノメータ―値をチェックする。

    ⑩気管チューブの固定

    ・バイトロブロックを挿入し、気管チューブを固定する。

    ・ バイトロブロック挿入、気管チューブ固定を介助する。

    ・ チューブの径と固定の長さを確認し記録する。

    ⑪人工呼吸開始

    ・ V.S、呼吸状態に問題がないことを確認し、次の援助を開始する。

    (3)麻酔導入から気管挿管までの援助  モニターを装着し、V.Sをチェックし、末梢静脈ルートを確保されたら、麻酔導入と気管挿管を行う。

    麻酔導入から気管チューブの挿入までは、自発呼吸から意識消失、筋弛緩、人工呼吸開始と患者の呼吸・循環動態が大きく変動する時期である。看護師は、呼吸状態、血圧の急激な変化、不整脈、心電図の虚血性変化などの異常の出現に注意し、患者の全身状態を観察しながら、迅速かつ正確に麻酔医の介助を行う。

    (4)膀胱留置カテーテルの挿入  

    Ba留置カテを挿入し、術中の尿量を測定し、腎機能や循環血液量の指標とする。カテは、感染防止のために連結チューブ、蓄尿バッグが一体構造になった閉鎖式持続尿回路を用いる。

    Ba留置カテを無菌操作で挿入し、尿の流出状態を観察し、カテの屈曲がない位置で女性は大腿部に、弾性は下腹部に絆創膏で固定する。

    (5)電気メス対極板の装着  

    電気メスは電気メス本体・メス先電極・対極板で構成される。
    電気メス本体からの高周波電流が電気メスホルダーに流れ、メス先電極で組織の切開と凝固を行う。

    高周波電流は、メス先電極から生体組織を通って、対極板に回収される。対極板の面積が小さい、シワにより皮膚との接触面積が小さいなどの場合には、電流が集中し、電流密度が増大した部位に火傷を起こす危険性がある。また、皮膚が金属や水分と接触している部分に電流が流れ、火傷の原因となる。対極板は、大腿部、殿部、腰背部など、十分な面積をもつ平らな部分で、消毒液や血液、洗浄水が流れこむ危険のない部位に貼用する。

    ・ 他に術中にNSが留意すべきことは?

    ・ 患者は術中どのような姿勢ですか? ⇒褥瘡、神経圧迫による麻痺

    麻酔覚醒時の援助
    ①手術終了〜麻酔覚醒、気管チューブ抜去(抜管)の看護  手術が終了したら、患者の麻酔からの覚醒状態を観察する。

    意識があり、呼びかけに頷きや開眼で反応することができる。
    自発呼吸で1回換気量と呼吸回数が十分である。咳嗽反射と嚥下運動がある、筋力が回復し握手ができるなど、抜管の条件を満たしていることを確認する。  麻酔覚醒から抜管までは、人工呼吸から自発呼吸への移行期であり、創部通や抜管の刺激などにより、呼吸・循環系の変動が予測される。

    看護師は、患者から目を離さず、バイタルサインを観察しながら、麻酔医の抜管の介助を行う。麻酔覚醒が不十分な状態で抜管すると舌根沈下などによる上気道閉塞をきたすことがある。抜管後は、呼吸状態やチアノーゼの有無、意識状態を観察し、異常時にはエアウェイの挿入や再挿管ができるように準備を整えておく。

    ②麻酔覚醒時の苦痛の緩和  

    麻酔覚醒直後は、創部痛だけでなく、ドレーン挿入部痛、Baカテやマーゲンによる不快感、気管チューブ挿入による咽頭痛など、様々な苦痛がある。呼吸抑制による呼吸困難感、悪寒戦慄、術式や麻酔の影響を予測し、患者の訴えをよく聞き、表情やバイタルサインの変化から苦痛の原因や異常を早期発見し対処する。

    (1)呼吸抑制
     原因:吸入麻酔薬、麻薬などの全身麻酔の影響、筋弛緩薬の遷延性効果、覚醒遅延時の舌根沈下による気道閉塞、術後の疼痛 看護:呼吸困難感の有無、呼吸状態、バイタルサインのチェックを行い、麻酔医の指示量の酸素吸入を行う。患者に深呼吸を促す。舌根沈下がある場合は枕の高さを低くする、頸部屈曲など体位の工夫をする、気道を確保するためのエアウェイを挿入することもある。

    (2)創部痛
    原因:術直後の創部痛は、手術操作による組織損傷に伴う痛みと創部の炎症に伴う痛みによって生じる。開腹術や開胸手術では、内臓痛、ドレーンの腹膜、胸膜刺激による疼痛などが生じる 看護:疼痛は、呼吸異常や末梢血管収縮による高血圧、不安や恐怖感の原因ともなるので、適切な疼痛管理をする。患者の訴え、表情や体動を観察し、疼痛の程度、種類、部位を把握する。安楽な体位をとるなど工夫するとともに、麻酔医と鎮痛薬の適応を判断し、鎮痛薬を投与する。

    (3)低体温による悪寒戦慄(シバリング)
    原因:手術中からの低体温が持続すると、麻酔覚醒後には熱産生のための反応としてシバリングが起こる。シバリングが起きると、酸素消費量が増加し、低酸素症に陥りやすい。 看護:手術終了時には、血液や洗浄液、消毒液を温タオルで拭き取り、乾いたリネンで身体の露出を最小限にすること、体温や末梢皮膚温を観察しながら、室温を調節し、温水マットや温風加湿装置を用いて加湿することで、対応の低下を防ぐ、リバリングでは、酸素消費量が増加するので、Spo2をチェックし、呼吸状態を観察するとともに、麻酔医指示の酸素吸入を行う。

    術後・術直後の看護
    ①手術の侵襲度や原疾患の重症度、患者状態などに応じた間隔で、意識、呼吸、循環、出血、術後疼痛などをモニタリングする。

    ②正常からの逸脱が生じた場合には、その状態が安定するまで頻回に観察

    ③術前状態および直前状態と比較しながら観察する。

    ④移動前・移動中・移動後のモニタリングは重要である。

    ⑤術前・術中の情報から、起こり得る可能性の高い術後合併症を予測しておく。

    ⑥手術・麻酔の侵襲に対して恒常性を維持するための合目的な生体防御反応を考慮して情報をアセスメントする。

    ⑦高齢者の場合には、手術・麻酔の侵襲に対する予備力や臓器機能が低下しており、生体反応が明確にあらわれないことがある。

    術直後のリスク状態とモニタリング
    リスク 原因 モニタリング指標 治療・ケア 意識 麻酔覚醒遅延 麻酔薬・筋弛緩薬の残存 鎮痛・鎮静薬 低体温 低血糖・高血糖 電解質異常 高炭酸ガス血症

    ・低酸素血症 呼名反応 指示反応 痛覚反応 対光反射、瞳孔反射、睫毛反射 気道確保:頭部後屈顎先挙上

    ・下顎挙上 経鼻エアウェイ挿入 気管挿管 呼吸 気道閉塞 麻酔薬・筋弛緩薬の残存 舌根沈下 分泌物、出血、吐物 喉頭痙攣、喉頭浮腫 呼吸:数、パターン、リズム 呼吸音 Spo2 末梢酸素供給:チアノーゼ、皮膚の色、温度、 喀痰排出状況:量、性状、疼痛 動脈血液ガス分析 胸部X線検査 カプノメータ―による呼気終末炭酸ガス濃度 Co2 気道確保 口腔内吸入

    ・気管内吸引 酸素療法 疼痛マネジメント 体位変換 深呼吸の促進 吸入両方、肺理学療法 口腔ケア 低換気 麻酔薬・筋弛緩薬の残存 鎮痛・鎮静薬 低酸素血症 低換気 無気肺に伴う換気血流比不均衡 術後疼痛 シバリング 肺水腫、肺塞栓、気管支痙攣 循環 低血圧 麻酔薬の残存による末梢血管抵抗の減少 循環血液量の減少:術後出血、サードスペースへの水分の移行 体位変換 体温 脈拍、数、緊張、リズム 血圧 時間用量・尿比重 出血 ドレーン排液の量・性状 輸液・輸血量・速度 体重 末梢循環:皮膚の色、温度、湿潤 疼痛 三点誘導心電図 肺動脈圧、肺動脈楔入圧、心拍出量 RBC,Hb,Ht,PlT、電解質、酸塩基平衡 胸部X線検査 酸素療法 輸液・輸血管理 疼痛マネジメント 薬物療法:カテコールアミン、血管拡張薬、血管収縮剤 利尿薬 原因に対する治療 高血圧 高血圧の術前合併症 降圧薬からの離脱症状 高炭酸ガス血症、低酸素血症 頭蓋内圧亢進 疼痛 体位変換 過剰輸液 膀胱充満 シバリング 不整脈 洞性徐脈≦60/分 β遮断薬の使用 麻酔薬・筋弛緩薬拮抗薬の残存 心疾患の術前合併症 低体温、低酸素血症 アシドーシス ≧110/分洞性頻脈 術後の交感神経の活動亢進 疼痛 不安 低酸素血症 循環血液量の不足 アシドーシス 膀胱充満 期外収縮 術後の交感神経の活動亢進 急性循環不全 循環血流量減少性ショック 出血、脱水などによる循環血液量の減少 心原性ショック 心筋梗塞、心タンポナーデ、重篤な不整脈などによる心拍出量の減少 細菌性ショック 感染反応に対する低血圧と組織血液灌流の低下 DVT 肺動脈血栓塞栓症 血管壁の異常 血液のうっ滞 血液凝固

    ・線溶系の異常

    ・他には 代謝 シバリング 低体温 麻酔回復時の脊髄反射

    ①意識
    手術終了と現在の場所などを伝えながら、呼名や指示、痛みの刺激に対する反応を観察して、意識レベルをアセスメントする。意識レベルが低下しているようであれば気道確保など速やかなケアが必要である。

    ②呼吸
    全身麻酔下での術後には、術前と比較して最大換気量は40〜60%減少し、酸素消費量は20%増加する 術直後は、麻酔薬や疼痛の影響などにより、気道、換気、および血液酸素化が障害されるリスクが高く、呼吸は循環にも影響を及ぼす。  

    確実な酸素療法を実施し、麻酔覚醒直後から、積極的な深呼吸法を促進しながら、呼吸数、呼吸リズム、呼吸音、Spo2による末梢酸素供給、喀痰排出状況、低酸素血症の徴候などを観察する。これらの観察から得られた情報に加えて、動脈血ガス分析とその採血時の酸素吸入条件、胸部X線検査の検査結果を継続的にアセスメントして、呼吸の変化の推移を把握し呼吸器合併症(無気肺、肺炎、肺水腫、胸水貯留など)の予防と早期発見、対処に努める。 Spo2は非侵襲的かつ連続的に酸素飽和度をモニタリングできて有用であるが、不整脈や低血圧、末梢循環不全の状態では測定誤差が大きく、注意が必要である。

    ※ 低酸素血症の徴候 初期徴候 頻脈、頻呼吸、血圧上昇、情動不安 進行期徴候 呼吸困難、不整脈、血圧低下、チアノーゼ、意識低下

    ※動脈血ガス分析

    項目 基準値 指標 Pao2 80〜100 酸素化 PaCo2 38〜46 換気、炭酸ガス排出能 Sao2 95〜100% 血液の酸素運搬力 pH 7.40 ±0.02 酸塩基平衡 塩基過剰BE 0±2 酸塩基平衡 HCO3 24±2 酸塩基平衡

    ③循環
    術直後には、術前・術中の影響に加え、サードスペースへの細胞外液の移行によって、有効循環血液量は不足になり、一方で、代謝の亢進に伴う組織の酸素消費量の増大により、必要循環血液量は増加する。循環系の十分な酸素運搬機能が保持されない場合には、急性循環不全に陥るリスクが高い。 ※ 急性循環不全の徴候 血圧低下、瀕・徐脈、不整脈、全身の虚脱、チアノーゼ、冷汗、皮膚温の低下、時間用量の減少 体温、脈拍、血圧、時間用量、ドレーン排液量などに加えて、心電図波形を観察する。これらの観察から得た情報に加えて、検査データを継続的にアセスメントして、

    循環の変化の推移を把握し、十分な酸素投与下で、適切なヘモグロビン値、脈拍、血圧、尿量を維持、すなわち循環血液量を維持しながら、低酸素血症、循環器合併症(心筋梗塞、不整脈、心不全、DVTなど)の予防と早期発見、対処に努める。
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