1. 病態生理
冠動脈のアテローム硬化、冠状動脈のスパズムにより心臓の酸素需要が増し、心筋が
酸素不足となり、一過性の虚血状態が発生し、胸痛と心電図に変化を生じる。
下記に示すもののうち、①、②が誘因となり、③~⑥の変化を起こす。
① 状況因子:喫煙、肥満、ストレス
② 基礎疾患:高血圧症、糖尿病、高脂血症
③ 動脈硬化 ④ 冠動脈の血管攣縮 ⑤ 冠動脈の塞栓症 ⑥ 血管解離
2. 主要症状
①胸骨下または左前胸部、心窩部の圧迫感、絞扼感、灼熱感、鈍痛、胸部全体の不快
感、倦怠感
② 肩、頚部、左上肢への放散痛
③ 嘔気、冷感
④ 胸痛持続時間は5分以内で、15分以上はまれ
⑤ ニトログリセリン舌下投与で、5分以内に発作の消失
⑤ 無痛性心筋症(高齢、糖尿病の場合など)
3. 検査、診断
①心電図:虚血性ST下降、T波の平低下逆転 安静、非発作時は正常
運動負荷心電図(マスターダブル法):虚血性変化の誘発
② 血液検査:白血球数、GOT, GPT, LDH, CPK上昇
③ 心エコー
④ 心筋シンチグラフィー
4、治療
① 酸素吸入
②薬物療法
a.冠拡張剤:シグマート(5mg)、ペルサンチン(25mg, lOOmg)
b.ニトロ剤:ニトロペン、ニトロール(5mg)、フランドル(20mg)
③ 発作時の安静
④ 発作の予防(冠動脈危険因子除去)
5、観察のポイント
(1)既往歴
(2)バイタルサイン
① 血圧の変化
② 脈拍(不整脈、頻脈、徐脈)
③ 呼吸回数
(3)胸痛の程度・性質・部位・持続時間
(4)検査データ:心電図所見(ST-Tの変化の有無)
血液検査(白血球数高値、GOT, GPT, LDH, CPKの上昇)
6.看護のポイント
① 発作時、胸部圧迫感や不快感を訴えた場合、指示下でニトログリセリンを与え、痛
みの緩和状態を観察する。また、発作の誘因、持続時間、程度の把握に努める。
② 安楽な体位の工夫をする。
③ 症状が落ち着いたら、発作を起こさない程度に規則的な運動をさせる。
④ 心筋梗塞や心不全に移行する場合もあり、再発作や悪化防止のために急激な運動、
階段の昇降、過労、過食、興奮、排便困難、喫煙などの発作の誘因を、日常生活
で避けるよう指導する。
⑤ ニトロペンを常に携帯させる。副作用に頭痛、顔面紅潮、動悸、時に低血圧によ
る脳貧血症状があるので、立位のままで服用せず座って服用するよう指導する。
⑥ 退院後、心臓の予備能力の範囲内で活動、日常生活が送れるよう指導し、再発作
を予防する。
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