呼吸不全の看護と看護のポイントについて解説します。 - 看護実習を楽に!学生さんお助けサイト

呼吸不全の看護と看護のポイントについて解説します。

1. 病態生理

 呼吸不全は、さまざまな原因により起こる。低酸素血症(hypoxemia)をまねく原因は、ガス交
換の過程から肺胞低換気、拡散障害、シャント(静脈血混入)、換気血流比不均等分布の4つに整
理することができる。高二酸化炭素血症の原因は肺胞低換気である。おもな原因疾患を表1を参照。



表1 低酸素血症(hypoxemia)をきたす疾患

 1.肺胞低換気のある疾患
  A.閉塞性障害のある疾患:気管支喘息、慢性肺気腫、慢性気管支炎、じん肺
  B,拘束性障害のある疾患
   1)肺の伸展障害のある疾患:間質性肺炎、肺線維症、肺結核
   2)胸郭の伸展障害のある疾患:脊椎彎曲、助骨骨折
   3)横隔膜の運動障害のある疾患:腹水、肥満、横隔膜神経麻痺
  C.神経・筋疾患:重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症、
  D.呼吸中枢障害:原発性肺胞低換気症候群、脳外傷および梗塞、甲状腺機能低下症、ポリオ

 2.拡散障害のある疾患
  A.間質肺炎・肺線維症:特発性間質性肺炎、膠原病一般
  B・肺水腫:心不全
  C.脳血管障害:肺血管の血栓あるいは梗塞
  D.肺組織の解剖学的喪失:慢性肺気腫、肺結核、肺切除、肺腫瘍

 3.シャント形成がある疾患
  無気肺、肺炎、肺水腫、肝硬変・慢性活動性肝炎、肺動静脈瘰

 4ム換気血流比不均等分布の著明な疾患
  慢性気管支炎、ぴまん性細気管支炎、慢性肺気腫、気管支喘息、肺梗塞


3、 症状・検査・診断


 咳嗽を主症状とする。最初は乾性咳嗽のこともあるが、後に粘液性を伴う膿性痰を喀出することもある。
喘鳴、発熱(微熱のことが多い)等もみられる。急性気管支炎は気管炎を合併することも多く、胸骨の奥の灼熱感や疼痛(胸骨下痛)を訴える。

 聴診上、気管支音や湿性ラ音を聴取することもある。通常、胸部X線では異常所見を認めない。
胸部CTで気管支壁の肥厚や気管支周囲の炎症像を認めることもある。 CRP (C反応性蛋白)
の上昇、赤沈の亢進なども認められる。細菌感染では白血球増多をみる。喀痰培養で起炎菌を同
定することもできる。しかし、起炎ウイルスの同定は困難である。短期に治癒するので、抗ウイ
ルス抗体検査はあまり行われない。ヘルペスウイルス感染では喀痰細胞診で特徴的な封入体を認
め、診断できることもある。




 【鑑別診断】
  長引く咳では肺結核、気管支結核との鑑別も重要になる。百日咳や細気管支炎は乳児・幼児
では重篤な病態を引き起こすことのある下気道疾患で、上気道炎症状に続発するので鑑別に注   意を要する。


4、 治療・看護のポイント

 気管炎・気管支炎は一般に予後が良好であり、短期間で自然治癒するので、治療・看護は症状
軽減に向けられる。

 【治療の指針】
 対症療法が主体である。鎮咳剤。去痰剤、消炎鎮痛剤を投与する。ウイルス感染が気道の防御
機構を障害し、細菌感染を惹起する可能性が示されている。逆に細菌感染が存在すると、ウイル
ス感染が続発しやすい点も指摘されている。

 【治療薬と注意点】
 細菌性気管支炎では感受性のある抗菌薬を投与する。すなわち、肺炎球菌、インフルエンザ菌、
黄色ブドウ球菌、緑膿菌には感受性のあるセフェム系薬、ペニシリン系薬などを投与する。マイ
コプラズマやクラミジアに対しては、ペニシリン系薬やセフェム系薬は無効であり、前者にはマ
クロライド系薬が有効で、テトラサイクリン系薬が第1選択で、マクロライド系薬なども有効で
ある。

 【看護のポイント】
1)保温、加湿、栄養、休養を十分に与える。
2)慢性肺器腫、慢性気管支炎、気管支拡張症、糖尿病などの基礎疾患があると重症化しやすく。
  死亡することも多いので注意を要する。
3)予防としては、手洗い、うがいを励行させ、かぜの患者との接触を避けるよう指示すること
が重要である。手指を介したウイルスの感染が起こるので、手洗いは重要である。


2.臨床症状
 【自覚症状】
 呼吸困難、息切れがもっとも多い、安静時の呼吸困難の客観的指標としC Hugh Jones (ヒュー・
ジョーンズ)の分類(表2)が、労作時の指標としてBorg (ボルグ)スケール(図2)がある。
慢性的に進行した呼吸不全患者では自覚症状が出にくいため、身体所見を見逃さないようにする。

 【身体所見】
 低酸素血症でみられる所見は、急性呼吸不全に顕著であり、チアノーゼ、呼吸促迫、頻脈、不
穏、失見当識、不整脈、乏尿、ショック状態、心停止をきたす。安定期よりも血中の二酸化炭素
濃度が上昇した高二酸化炭素血症では、心拍出量の増加と抹消血管の拡張による手の温もり、発
汗、羽ばたき振戦、傾眠傾向、昏睡状態、瞳孔散大などがみられる。

 慢性呼吸不全では、肺性心による浮腫、頚静脈の怒張、起坐呼吸に加え、頸部の呼吸補助筋で
ある胸鎖乳突筋や斜角筋の活動が増すための鎖骨上窩の陥凹、肩呼吸、囗すぼめ呼吸などを見逃
さないようにする。また気管支拡張症や肺癌、間質性肺炎で多くみられるばち指や、肺気腫患者
に特徴的な樽状胸郭なども重要な情報である。


表2 Fletcher, Hung-Jonesの呼吸困難度
 I度:同年齢の健常者と同様の労作ができ、歩行、階段の昇降も健常者なみにできる。
 n度:同年齢の健常者と同様に歩行できるが、坂、階段は健常者なみにできない。
 Ⅲ度:平地でさえ健常者なみに歩けないが、自分のペースなら1. 6 k m以上歩ける。
 Ⅳ度:休みながらでなければ50m以上歩けない。


図2 Borgのスケールによる呼吸困難の評価
   最大限につよい    10
   非常につよい     9
            8
   とてもつよい     7
            6
   つよい        5
   ややつよい      4
   中くらい        3
   よわい         2
   とてもよわい     1
   非常によわい    0.5
   まったく感じない   0
              0



◆教育◆
 慢性閉塞性肺疾患に代表される慢性呼吸不全は、非可逆的、進行性である。患者は、その疾患
がともにありながらも、できるかぎり快適で有意義な人生を送れるようにならねばならない。そ
のために有効な手段を教える。
 まず禁煙教育を行う。年齢に関わらず、禁煙により肺機能の低下速度は遅くなる。他の疾患(癌、
心血管障害など)による死亡率も低下するので、禁煙は治療と同等の意味を持つ。そのほかに呼
吸のしくみ、自分の病名、病態の理解に加え、薬指導、日常生活上の指導を行う。


◆薬物療法◆
 薬物療法の中心は気管支拡張薬の組み合わせであり、吸入による投与が望ましいとされる。薬
の種類、薬剤の作用、副作用が自分で分かるように指導を行う。


◆非薬物療法◆
〔在宅酸素療法〕
 酸素は薬物療法と同じように、きちんと吸入量を設定し、導入するさいには指導を行う。た
 だ酸素を処方するだけでは患者のQOLの改善にはならないため、呼吸リハビリテーションの
 一貫として処方する。健康保険に定められた在宅酸素療法(HTO)の開始基準を表4に示す。
 呼吸困難が理由での酸素の処方は現在行われていない。酸素は基本的に24時間の吸入とし、
 安静時、労作時に分けて1分間の流量を処方する。安静時は血液ガス分析の結果を目安に流量
 を設定し、労作時は6分間の歩行を行ったさいのs p O 2 (動脈血酸素飽和度)の値を参考に設
 定する。疾患によるが、通常、安静時の2倍程度必要である。
  〔包括的リハビリテーション〕
  
慢性呼吸不全は高齢者に多く、苦しいから外へ出ない、動かない、食欲がない、臥床がちに
なった、足がよわったなど、呼吸困難の増悪と同時に心理的障害、社会的不利、能力障害、機
能障害が生じ、受診時には日常生活がさまざまに制限されていることが多い。したがって、慢
性呼吸不全を1つの障害としてとらえ、日常生活を障害発生以前に近づけるリハビリテージョ
ンが必要となる。教育、運動トレーニング、栄養療法を含む包括的リハビリテーションの概念
を図4に示す。

運動療法は、運動耐容能を向上させ、体動時の呼吸困難を軽減する。 QOLをあげる目的で下肢の筋力を鍛えるためには、高齢者の場合には平地歩行が効果的である。 HOT施行中 の場合では1日5000歩以上を目標とする。日常生活動作に必要な上肢の筋力増強も大切である。口すぼめ呼吸をしながら動作を行う。痰の多い患者には排痰法の指導を行う。

栄養療法も重要である。 COPDの患者では高度の肥満ややせを伴うことが多い。やせの場合、栄養不良が続くと筋量が減少し呼吸困難が増す、免疫力が低下し予後がわるくなるなどの弊害がある。そのため十分なカロリーをとる工夫例を示す。肥満の場合には、肥満により息切れがつよくなる、骨折のリスクが高くなる、などの弊害があり、減量が必要である。

COPDでは骨粗鬆症の合併が多いため、カルシウム、ビタミンDを多くとるよう指導する。右心負荷がありループ利尿薬を投与中の場合には、カリウムを多く含む食品をとるよう指導する。
  




(表4 健康保険に定める在宅酸素療法の実施基準)
 1.慢性呼吸不全例のうち、対象となる患者は、動脈血酸素分圧5 5 Torr 以下の者および動脈
   酸素分圧6 0 Torr 以下で睡眠時または運動負荷時に著しい低酸素血症をきたす者であっ
   て医師が在宅酸素療法を必要であると認めたものである。
 2.在宅酸素療法の対症疾患は、高度慢性呼吸不全例、肺高血圧症およびチアノーゼ型先天性
   心疾患に対し実施されるものは、呼吸器疾患の場合とは異なる適応条件が定められてい
   る。
 3.高度慢性呼吸不全例のうち、主たる基礎疾患は、慢性閉塞性肺疾患、肺結核後遺症、間質
   性肺炎、肺癌などである。
 4.酸素吸入以外に有効と考えられる治療(抗生物質、ステロイド、気管支拡張薬、利尿薬な
   ど)が積極的に行われており、少なくとも1ヶ月以上の観察期間を経て安定期にあること。
 5.適応患者の判定に、1994年4月より、パルスオキシメーターによる酸素飽和度
   (s Po2)から求められた動脈血酸素分圧(Torr)を用いてもよいとされた。

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プロフィール

看護研究科 小日方 さくら

Author:看護研究科 小日方 さくら
某看護大学を卒業して大学病院で8年勤務。 その後フリーのライターとして活動しています! 看護学生さんに役立つ情報をいっぱい記載してます! ぜひ見に来てくださいね♡

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