肺切除術前後の看護計画について解説します。

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    By看護研究科 小日向 さくら

    みなさん、こんにちわ。 看護研究科の大日方さくら(@lemonkango)です。

    肺切除術ですが、現在では「開胸術」と呼びます。

    開胸術とは,胸部を切開して胸腔を露出させ,検査・処置・手術を行なうことをいいます。その多くは肺癌の手術で行なわれますが,他にも縦隔腫瘍や食道癌の手術,胸部大動脈疾患の手術,外傷の処置などで行なわれます。開胸術は皮膚切開部位の違いから,後側方切開,前方切開,腋下切開,胸骨正中切開などに分けられます。

    はっきりいって上記の内容は国試にも出ませんのでスルーして頂き良いかと思います。

    それでは、肺切除術の基礎的な知識と看護計画について解説していきます。

    吹き出し イラスト6

    肺切除術前後の看護計画について解説します。





    肺切除 画像1

    .肺切除術前看護について解説します。

    肺切除術前看護では、全身麻酔下で治療を行われる事が前提です。そのため、他の全身麻酔下の看護計画とかぶる部分が多数ありますが、ご紹介したいと思います。

    看護目標
     

    1.疾患、手術に対する不安が軽減され、手術にむけて精神的準備ができる

    2.苦痛の軽減を図り、体力の消耗が最小限になる

    3.全身状態の評価により術後合併症を予測し手術に対する身体的準備ができる

    4.家族の精神的慰安に努める

    実習目標
     

    ①手術を受ける前の患者さんとコミュニケーションを図り、手術に対する想い・不安を傾聴することができる

    ②術前の説明や援助の実際を見学し、術中・術後と結びつけて考えることができる

    周手術期の看護実習では特に疾患や手術に対する専門知識を幅広く意味を考え、アセスメントすることが求められます。

    その場で指導者や教員から質問された内容をスラスラと答えられないと、事前学習不足、やる気が無いのか? と思われます。

    看護上の問題 期待される結果 具体的計画
     

    #1.疾患や手術に対する不安 1.診断のための検査と手術の必要性がわかり、納得できたことを言葉で表現できる
    2.患者が思いや不安を言葉で表現できる
    3.術前・術後の自分の状態がイメージでき、対処方法を言葉で表現する


    O -1.入院への適応状況
    2.疾患、術前検査、手術に関する患者の情報量とその理解度
    3.表情、言語、態度の表出状況と不安の程度の関係
    4.食欲、食事摂取状況
    5.身体症状の有無と程度
    6.睡眠状況
    7.サポートシステムの状況
    8.性格
    9.対処行動と対処能力
    T -1.検査の必要性、方法をわかりやすく説明して協力を得る
    2.検査の結果について、医師から十分説明を受けることができるように配慮する
    3.術前オリエンテーションを不安なく受けられるように援助する
    1)術後の腰部安静保持の必要性を説明し、仰臥位から側臥位へ、側臥位から仰臥位へ、腰部をねじらないようにして変換する練習を行う
    2)仰臥位(または側臥位)での食事、排泄、含嗽、四肢の運動方法等を指導し、練習を行う
    3)術後は創部ガーゼの圧迫と保護、また装具装着時の皮膚の保護のため、腹帯を準備する
    4)医師から指示があれば、その必要性を説明し、手術前日に剃毛を行う
    5)術前の浣腸の必要性について説明し、手術当日(早朝)に浣腸を行う
    E -1.患者が術後の状態を具体的にイメージできるように説明する
    2.床上生活にむけての術前トレーニングの必要性を説明し、理解を促す
    3.医師の説明で理解不足の内容があれば追加説明し、納得して手術が受けられるようにする
    4.不安な状態を表出してもいいことを伝え、不明なところは質問するよう促す


    #2.疾患による苦痛 1.身体的・精神的苦痛を最小限にとどめられる

    O -1.痛み、しびれ痛の部位、性質、持続時間
    2.リスクファイターの有無(身長・体重・BMI、栄養状態、各種血液検査データ)
    T -1.安楽な体位を工夫する(ベッドマットを考慮し、必要時、クレタマットやエアーマット、ベッド板を使用する)
    2.医師の指示により鎮痛薬の使用、マッサージ、温罨法・冷罨法の使用
    3.精神的苦痛もあるため、感情の動揺や緊張が避けられるように援助する
    E -1.痛みが自制不可の場合、医師、看護婦に報告するように指導する


    #3.下肢の運動障害、神経症状等の悪化、膀胱・直腸障害 1.異常の早期発見ができ、適切な処置を受けることができる O -1.運動状態、神経症状(しびれ、知覚の有無)の観察
    排泄状況の観察(頻尿、残尿、便秘)
    T -1.急激な症状悪化の場合は医師に報告
    2.便秘は排便時に怒責することで腰部に負担をかけ、症状を悪化させやすいので術前から便秘の予防を行う
    E -1.症状が悪化している場合、医師、看護師に報告するよう説明する
    2.便秘の予防方法を指導する


    #4.セルフケアの不足
    1.入院生活を安全・安楽にすごすことができる

    O -1.食事動作、清潔行動、移動動作、排泄行動等、行動能力の程度
    2.疼痛、神経症状の程度(及び鎮痛剤の効果)
    T -1.不足ADLの介助
    1)食事:配湯・下膳介助
    2)保清:入浴介助
    3)排泄:尿器やポータブルトイレの使用
    4)歩行器・車椅子の使用、他科受診時担送介助
    5)ベッド周囲の環境整備
    2.腰椎に負担となる動作(重いものを持たない、おじぎ動作をしない、腰をねじらない、長時間の坐位、あぐらの禁止等)を説明し、そのような動作を避けるように援助する
    E -1.危険の防止、また、腰椎に負担となる動作を避ける必要があることを患者に伝え、危険のない範囲でADLが自立して行えるように指導する


    #5.手術後の肺合併症
    1.手術後に肺合併症の起きる可能性の高いことが理解できたと表現する
    2.肺合併症予防のための術前練習の必要性がわかったと表現する
    3.肺合併症予防のための練習が実施できる

    手術前日

    O -1.呼吸状態
    2.咳嗽、喀痰の有無と程度
    3.呼吸機能検査の結果
    4.リスクファクター(高齢、肥満、喫煙歴、喫煙量、心・神経疾患、閉塞性肺疾患)の有無と程度
    5.胸部X-Pの結果、胸廓の変形の程度
    6.動脈血ガス分析の結果
    7.手術の受け止め方
    T -1.肺合併症予防の練習を行う(深呼吸、含嗽、喀痰方法等)
    E -1.肺合併症予防のための術前トレーニングの必要性を説明し、理解を促す
    2.禁煙、体重の減量、術前トレーニングの必要性を説明し、理解を促す


    #6.家族の不安
    1.家族ケア、家族サポートをとおして患者が支えられる

    O -1.家族の表情、言語による表現、態度
    2.家族と患者との人間関係
    3.家族、患者間の疾病の理解、認識の差
    4.家族間のサポートシステム
    5.家族の状況判断能力
    6.家族がとらえている患者の性格傾向
    7.経済的問題の存在
    T -1.家族とのコミュニケーションをとり、不安や心配事を表出しやすいように受容的態度でかかわる
    2.家族の考えと医療者の考えの違いがないか、また患者の考えを尊重してかかわる方法について相談し検討する
    3.家族内で起きている問題の対処ができているか、解決困難な時は相談にのる
    E -1.家族が患者の今後についてイメージできるように、術後の状況、入院期間、社会復帰の時期等についての知識を与える
    2.家族に患者のサポートの必要性を説明する

    肺切除2

    2.肺切除術後の看護計画について解説します。

    はじめに合併症について解説します。

    疼痛
     

    肺切除における標準的な開胸法は後側方切開法とされ,前腋窩線から肩甲骨下縁1〜2横指下をほぼ肋骨の走行に合わせて切開します。そして僧帽筋,広背筋などの筋肉も切開します。 このように創部が大きいということだけではなく,肋間神経などが走行しているところを切開しているため,創痛が出現・増強しやすいといえます。
    疼痛が起こると,不安や恐怖につながり,術後せん妄を引き起こす可能性が高まります。さらに交感神経が賦活化され,血圧や脈拍の上昇を引き起こします。これは後出血や不整脈に影響します。そして呼吸が浅く速くなり,胸郭運動や咳嗽の抑制,体位変換の拒否につながり,無気肺や肺炎の原因になります。したがって疼痛のコントロールは,術後肺合併症の予防や循環管理,術後せん妄の予防という点からもとくに重要です。

    術前から患者さんには,創の痛みを我慢せずに知らせるように説明しておきます。そして術中に硬膜外カテーテルを留置し,術後には鎮痛薬が持続投与できるようにします。それだけでは十分に鎮痛が得られない場合は,硬膜外カテーテルからのボーラス投与やオピオイド系鎮痛薬,または非ステロイド性消炎鎮痛薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs;NSAIDs)の併用投与を行います。

    疼痛がコントロールされているかを判断するためには,硬膜外カテーテルの固定状況や鎮痛薬が確実に投与されて減っているかを確認したうえで,患者さんの訴えや表情,バイタルサインの変化,呼吸状態,咳嗽の有無,咳嗽力の変化,活動性について観察していきます。疼痛スケールを用いて評価することも有用です。

    また,術中体位の影響から腕・肩・腰などの身体的苦痛を訴える場合もあります。この場合は,安楽な体位への援助や湿布薬の使用,痛みの程度・位置を確認しながら関節可動運動・マッサージなどのリラクゼーションを行うことも,疼痛コントロールにつながります。

    後出血


     後出血は,とくに術直後から術後2日目までに起こりやすく,緊急再開胸止血術の目安としては,1000 ml以上の出血,100〜200 ml以上の出血が3時間以上続く場合などであり,脈拍の上昇,血圧低下,その他の全身所見も含めて総合的に判断されます。胸腔ドレーンからの血性排液が,1時間で100 ml以上あるときは医師への報告が必要です。

    ドレナージが効果的に行われていない場合は,胸腔内に出血が貯留します。または創部から出血してくることも考えられるため,創部の観察に加え,顔面蒼白や冷汗の有無,呼吸音の減弱・消失,SpO2の低下,脈拍の上昇,血圧の低下などのショック症状が出現していないか観察を行います。他には血液ガスや血液検査によるヘモグロビンの低下,胸部X線によって肺の虚脱と陰影の所見も得ることができます。

    無気肺
     

    全身麻酔に伴う気管挿管や麻酔の影響で気管分泌物が増えます。そして,リンパ節郭清操作による気管支の血管・リンパ管・神経の損傷が起こると,気管支粘膜の腫脹や線毛運動の障害をきたします。さらに疼痛のために体位変換や咳嗽ができなくなると,気管分泌物は貯留し無気肺になります。とくに手術が長時間に及んだ場合やリンパ節の郭清を多く行った場合,喫煙者(とくに術直前まで喫煙していた場合)や高齢者には注意が必要です。

    分泌物が貯留した状態が続くと,肺炎になってしまう可能性があるため,予防的介入と早期発見・対処が必要です。呼吸は浅く速くなっていないか,呼吸困難感が出現していないか,SpO2の低下,喘鳴の出現や,聴診により連続性副雑音(wheezes,rhonchi)がないか観察していきます。

    観察と同時に予防的介入を開始し,早期から体位変換や深呼吸を促し,咳嗽の介助や口腔ケアの実施によって排痰への援助を行います。分泌物の喀出ができず,胸部X線においても無気肺の所見が得られれば,ベッドサイドで気管支鏡検査を実施します。そして気管支の状態を観察するとともに分泌物の吸引が行われます。この気管支鏡による深部吸引は,分泌物が減少するか,もしくは自力で喀出できるようになるまで数日続けられますが,それでも無気肺が改善しない場合や症状を繰り返す場合は,輪状甲状間膜穿刺や気管切開が必要になることもあります。 肺水腫
     

    肺切除においては,肺の切除範囲が大きくなるほど肺血管床の減少も大きくなり,とくに片肺全摘出術の場合には右心後負荷が増大します。そして手術侵襲によって肺血管透過性が亢進している状態に加え,心機能が低下している場合や術中から術後にかけて過量の輸液があった場合,さらにリンパ郭清の影響や低アルブミン血症などもある場合には,肺水腫が起こりやすい状況といえます。

    また術後2日目以降には,手術侵襲によってサードスペースに移行していた水分が血管内に戻ってくるrefilling期に入ります。腎機能の低下がある場合は尿量の低下から体液過多になり,肺水腫をきたす可能性は高まります。

    肺水腫では,ピンク色の泡沫状痰の喀出,聴診によって呼吸音の増大や断続性副雑音(fine crackles,coarse crackles)が確認できます。重症化してくると脈拍の上昇,SpO2の低下,呼吸困難感が増し起坐呼吸となります。胸部X線では,心陰影の拡大,蝶型陰影(butterfly shadow)の所見が得られます。IN/OUTバランスを把握し,尿量が少ない場合には利尿剤の投与も検討されるため,医師への報告が必要です。

    不整脈
     

    術後1〜4日に多く,術中操作や術中の低血圧,電解質異常,低酸素血症,過量の輸液などが原因と考えられています。そしてrefilling期は,サードスペースからの水分が血管内に移行することで循環血液量が増えて尿量も増える時期ですが,正常に機能せずに尿量が低下すると循環血液量をさらに増加させ,肺切除によって肺血管床が少なくなっている状態であることからも右心後負荷は増大するため,心房細動や上室性頻脈の原因になります。そのため,尿量だけの観察ではなく,IN/OUTバランスや体重の評価が必要になります。

    また,動悸,冷汗,意識レベルの低下などの症状が出現する不安定な不整脈の場合には,同期除細動などの処置が必要になることもあり,早期に医師へ報告します。

    肺塞栓症
     

    術中・術後の体位による圧迫や術後の臥床により下肢深部静脈に血栓が形成され,立ち上がった際に血栓が剥がれて大静脈から右心房・右心室を流れて肺動脈に到達し,動脈閉塞を起こして発生します。閉塞した肺動脈の支配領域において,酸素化が行われずに低酸素血症をきたし,再開通しなければ梗塞壊死に至ります。

    術後,初回離床時に起こることが多いのですが,術後早期の臥床中に起こることもあります。閉塞した動脈の支配領域が局所的かつ小規模(区域レベル)であれば,突然の呼吸困難,不穏感といった自覚症状があります。そして説明のつかない低酸素血症,つまりSpO2の低下はあるが,X線上での異常陰影はなく,呼吸音も良好で気管支分泌物の貯留もない状態の場合は,緊急で胸部造影CTが必要になります。閉塞した動脈の支配領域が広汎かつ大規模(一側本幹もしくは上・下幹レベル)であれば,ただちに心肺停止に至ることもあります。

    予防策として,術前あるいは術中から弾性ストッキング装着や間欠的空気圧迫法を行い,歩行可能になるまで終日使用します。さらにベッド上での下肢の運動など,早期離床に向けたリハビリテーションを実施します。肺塞栓症の

    肺炎
     

    無気肺や誤嚥,肺瘻や気管支瘻が発生し細菌感染が起こることで,肺炎になっていきます。喀痰の増加,咳嗽,呼吸状態の悪化や発熱などの炎症症状があらわれます。観察ポイントや対応は無気肺の場合と大きく変わりませんが,誤嚥による場合では,嚥下状態や咳嗽(むせ)の有無や強さなどもあわせて観察が必要です。

    肺瘻
     

    肺切除後の縫合部や剥離面からの空気漏れのことを肺瘻といいます。通常は,ドレナージを継続することで自然に閉鎖しますが,ドレナージが効果的に行われない場合は肺の虚脱をきたすため,呼吸音の減弱や消失,SpO2の低下,胸部X線で肺の拡張状態を観察する必要があります。肺部分切除時に区域・亜区域気管支を損傷した場合や,気腫肺やブラからの空気漏れはなかなか止まらず,膿胸を併発する場合があります。

    気管支瘻
     

    気管支断端吻合部の縫合不全による空気漏れを気管支瘻といいます。胸腔ドレーンが入っていればドレーンから空気漏れや混濁した排液が認められますが,通常,術後1週間前後もしくはそれ以降に発生するため,胸腔ドレーンはすでに抜去されていることが多いでしょう。したがって,発熱,炎症所見,血痰もしくは胸水様の痰,胸部X線上の液面形成や気管支断端周辺の肺炎所見などがあれば,胸部CTや気管支鏡により縫合不全の有無を判断します。

    気管支瘻があれば気管支内容物が胸腔内に漏出して膿胸を併発し,さらには膿胸内容物を逆吸引して誤嚥性肺炎を併発,重症化することがあるため再手術になることが考えられます。胸腔ドレーンが抜去されているのであれば,再挿入が必要になります。また再手術の場合には,感染の有無などによって手術の方法も変わってきます。

    皮下気腫
     

    ドレーンの閉塞などによりドレナージが効果的に行われていない場合や,ドレナージが効果的に行われている場合においても,開胸部の肋間は閉鎖しきれず開いた状態になっているため,強く咳嗽をした場合に皮下気腫が発生する場合があります。空気が皮下組織に入り込むと圧雪感を持った膨隆として触診され,不快感や鈍痛を伴う場合があります。頸部にまで及ぶ場合は声に変調をきたし,縦隔気腫にまで発展することもあります。皮下気腫を発見した場合には,マジックペンなどによってその範囲を点線で囲み,範囲の変化を観察していきます。胸腔ドレナージされている場合では,自然吸収を待ちます。消退するのには数日から10日かかるといわれています。

    乳び胸
     

    リンパ節郭清操作などによる胸管(多くは本管ではなく側枝)の損傷により起こります。食事を摂っていると排液が白濁し,排液量が急激に増加します。ただちに絶食とし,排液量を見ながら低脂肪食を開始していきます。自然におさまることが多いのですが,排液量が減少しない場合は,胸管損傷部位の閉鎖のため手術が必要になります。

    膿胸
     

    肺瘻や気管支瘻などが発生し細菌感染を起こした結果,胸腔内に膿が溜まります。これを膿胸といいます。膿胸になると治癒までに長期間を要する場合が多く,再手術の可能性もあります。発熱,炎症所見,CTによって膿瘍が発生している部位や大きさなどの所見を確認していきます。胸腔ドレーンからの逆行性感染により膿胸になる場合もあるため,ドレーン刺入部の清潔管理についても観察していくことが重要です。

    反回神経麻痺
     

    反回神経麻痺は,リンパ節郭清操作に伴う胸腔内反回神経損傷による場合と,気管挿管による声帯自体の変形や腫脹による場合があり,嗄声と誤嚥をきたします。帰室後と翌朝に発声させ,嗄声の有無・程度を観察します。

    嗄声がある場合は,誤嚥を避けるための対策が必要になります。ベッドの頭位を30 °以上に挙上し,頭位を前屈にして顎を引くような体位調整を行います。とくに液体を飲むときは,少しずつ口に含んでから飲み込むように指導します。液体の嚥下時に咳嗽(むせ)がある場合は,とろみ剤の使用を検討します。そして,摂取時の体位調整や食事形態の変更についての検討も含め,言語聴覚士と協働していくことが望ましいと思われます。通常,手術操作による一時的麻痺は3〜4か月で回復しますが,切断・挫滅した場合は永久麻痺となり,場合によっては形成手術を考慮することになります。 胸腔ドレナージ管理
     

    目的
     

    胸腔ドレーンを挿入する目的は,手術創からの浸出液や肺胞や気管支から漏れた空気を体外に排出すること(drainage)と出血や感染などの情報を得ること(information)です

    胸腔内は,陰圧に保たれた閉鎖腔です。呼気時には約−3 cmH2Oから吸気時には約−8 cmH2Oと変化します。したがって一般的な胸腔内ドレナージ管理においては,呼吸と胸腔内圧によって影響を受けるため,胸腔ドレーンを−12〜10 cmH2Oで吸引することが多く,または水封を保つことで肺の虚脱を防ぎます。そして逆行性感染を防ぐためにもドレーンは閉鎖回路にします。出血や感染がなく,排液が100〜150 ml/日以下(施設によっては200 ml/日以下)がドレーン抜去の目安になります。さらに肺癌術後の胸腔ドレナージは,肺葉・肺区域切除術後と片肺切除術後では管理方法が異なります。

    片肺切除術後の胸腔ドレナージ管理
     

    片肺切除を行った胸腔内は,死腔になります。したがって胸腔ドレーンを挿入する目的はinformationのみとなります。ドレーンには,2本の鉗子を使用し,約20〜30 cmの間隔をとり2箇所クランプを行います。出血・排液の確認をする場合には,患者側に近いほうの鉗子から1本外して排液を流し,外した鉗子を再度クランプして,2本目の鉗子を外してボトル内に流してから,再度クランプします。何度も同じ位置でクランプしていると,ドレーンの破損の原因になります。したがってドレーンにテープを巻きつけ,クランプすることで破損を防ぎます。

    死腔になった胸腔内が陰圧になると,切除側に縦隔が偏位したり,心膜縫合部がさけて心臓が胸腔内に飛び出す形で上大静脈・下大静脈を軸として回転し,全身へ血液が供給されなくなったりすることがあります。心電図変化,血圧低下などの観察とX線による確認が必要になります。 後出血がなければ,胸水が貯留してくるのを妨げないために早期に抜去します。

    それでは肺切除術後の看護計画について解説します。
     

    #1呼吸機能が低下しているために肺合併症を起こしやすい 目標:術後肺合併症を起こさない

    OーP(観察)

    1呼吸状態:呼吸数、リズム、深さ、胸郭・横隔膜運動、息苦しさ、胸痛の有無、血液ガス分析値、酸素飽和度

    2肺炎症状:熱型、CRP、白血球数、胸部レントゲン

    3喀痰:量と性状、呼吸音、喀出状況

    4循環動態:脈拍、血圧、不整脈の有無、尿量、水分バランス、中心静脈圧(CVP)

    5肺塞栓症:急激な呼吸困難、ショック、チアノーゼ、胸痛、意識障害、低酸素血症などの有無

    6ドレーンからの排液状態(性状、量の変化、エアリーク、呼吸性移動)

    7皮下気腫の有無、程度

    TーP(実施)

    1術前から禁煙と呼吸訓練(腹式呼吸、くちすぼ目呼吸、咳嗽訓練、呼吸機能訓練)運動療法を実施する

    2喀痰を積極的に喀出する(気道浄化)

    a酸素投与の際の十分な加湿

    bネブライザー吸入

    c十分な水分摂取

    d体位変換、体位ドレナージ

    e咳嗽が十分できるように両手掌で胸郭を圧迫する

    f十分な鎮痛

    gセミファーラー位を保つ

    h深呼吸や腹式呼吸を適宜促す

    i胃管から空気や分泌物の排出、腸内ガスの排気を行う

    j早期離床

    3深呼吸を促す

    4口腔内の清潔を保つ

    5術中から深部静脈血栓症、肺塞栓症防止のため間欠的下肢空気加圧器を装着し、指示があるまで継続する

    EーP(教育)

    1術前から術後管理について具体的に説明し、イメージできるようにしておく

    2喀痰喀出の必要性と方法を説明する

    #2開胸手術の為に術後疼痛が持続する 目標:疼痛の状態を表現できる

    目標:疼痛が軽減する

    目標:睡眠がとれる

    OーP(観察)

    1痛みの有無、程度、部位

    2表情や言動的訴え

    3睡眠状況

    4活動状況

    TーP(実施)

    1硬膜外チューブからの鎮痛薬を持続投与する

    2鎮痛薬は計画的に投与する

    3昼夜の活動、夜間の休息に応じた投与を計画する

    4睡眠薬との併用も行う

    5咳をする時は用手的に圧迫保護する

    6挿入されているドレーンが体動によてむやみに動かないように十分に固定する

    7湿布の利用、温罨法を行う

    8リラクゼーション、マッサージを行う

    EーP(教育)

    1痛みは我慢する必要が無いことを話し、疼痛コントロールの方法を説明する #3身体的苦痛や悪性疾患であるために不安がある 目標:心配や気がかりが軽減して精神的に安定したと述べることが出来る

    目標:不安を回避する効果的なコーピング行動をとることが出来る

    OーP(観察)

    1不安を示す言動

    2疾病や治療についての受け止め方

    3過去の危機に伴う対処行動

    4キーパーソンの有無

    5サポートシステムの有無、家族の対処能力

    6睡眠状態、食欲

    TーP(実施)

    1患者の訴えを良く聴き、その都度丁寧に情報を提供し、共感的態度で関わる

    2医師から十分な説明が受けられるように調整する

    3感情表出できるような環境を提供する

    4検査や術前準備、術後の頚か、社会復帰について分かりやすく丁寧に説明する

    5気分転換活動を提案する(散歩、読書、入浴など)

    6キーパーソンや家族とともに取り組む

    7社会復帰や経済的な問題については、ソーシャルワーカーの支援などを依頼する

    8抑うつ的傾向が増強するなら、専門的カウンセリングを受けられるように調整する

    EーP(教育)

    1不安は当然なことで、できるだけ自分の気持ちを言葉にしてみることを伝える

    2キーパーソン、家族にも情報提供して協力を得る

    3不安の程度を把握し、計画適に情報提供していく

    4十分な情報提供を受け、納得して治療を受ける権利、治療に参加して自らが選択する権利を持っていることを伝える

    #4疼痛や呼吸困難の為にADL低下がある 目標:ADLが拡大する

    目標:運動プログラムを自主的に行うことが出来る

    OーP(観察)

    1患側上肢や肩の関節可動域

    2運動能力、筋力

    3退院後の生活過程

    4運動時の呼吸状態、疲労感

    5社会復帰に対する意欲

    6家族の支援状態

    TーP(実施)

    1疼痛コントロールを行う

    2正しい姿勢を保持する

    3胸郭全体の柔軟運動を行う

    4上下肢の運動(手術直後から他動運動、自動運動)を行う

    a頸の横曲げ、前後運動

    b頭の回旋

    c上腕前曲げ、ひじの横曲げ

    d肩関節の回旋

    e前腕を横に向ける

    f合掌腕曲げ

    g肘の横上げ

    h腕の下垂、身体の前屈

    i滑車運動

    5歩行訓練(経度の運動をできるだけ長く続ける)を行う

    6日常生活、家事動作の工夫を行う

    7適切な休息を入れる

    8食べ過ぎない

    9便秘を避ける

    10生活環境を改善する

    11入浴は食後を避け温めの湯に短時間はいり、洗髪は別に行う

    12ゆっくり体を動かす

    13出来るだけ腰かけた状態で作業する

    EーP(教育)

    1無理をせず、必要に応じて家族やヘルパーなどに依頼することを説明する

    2就業に当たっては、体調にあった環境を選択できるようソーシャルワーカーなどを相談する
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